就活のバカヤロー/石渡嶺司、大沢仁
取材中、ある学生からこんな質問を受けた。
「面接では、本当の自分を出すのと、マニュアル本などを参考にした自分を出すのと、企業に合わせた自分を出すのでは、どれが一番いいのでしょう?」
複雑な心境になる質問である。
「そんなもの、自分で決めろ!」と言いたくなるが、
「本当の自分を出してはどうですか、ウソをついても仕方がないでしょ?」
と考え、そう伝えた。
しかし、別の就職浪人をする予定の学生からはつぎのような質問を受けた。
「まわりの連中は、薄っぺらで中身がなくても、コミュニケーション能力の高い奴や、マニュアル本を参考にして演技した奴が大手企業に決まっている。この事実を大沢さんはどうとらえますか?」
ここに、現在おこなわれている就活の根本的な問題が現れているように思う。
自分を偽り、マニュアル通りのやり方をしてしまうイタい学生と、結局、その学生を、表面的な「コミュニケーション能力」や「学歴」などで「優秀な学生」と判断してしまうイタい企業。そして、このような学生と企業が存在することが、さらにまわりのイタい学生を増殖させていく・・・」
これは、なかなか根が深い問題だ。(P263)
毎年繰り返される、就活という茶番。
これは売り手市場と言われる好況時も、買い手市場と言われる不況時も同じである。
マニュアル人間はいらないと企業側が言っても、結局のところ、マニュアルによってしっかりと武装した学生が採用を勝ち取る。
そもそも、企業の採用担当者そのものがマニュアル人間ではないのだろうか。
自分で考え、判断し、答えを出せる人間を企業が求めているとよく言うが、多くの場合、そのような人間は、会社の中で潰されてしまう。
組織にとってあまり害のない人間が真っ先に出世してゆくというのが現実である。
そして、そのような人が採用担当者になったとしたら、本当に使える人材かどうかなど、見抜けるはずがない。
もうそろそろ、このような茶番はやめてほしいものである。