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2010年9月21日 (火)

サービスの天才たち/野地秩嘉

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本人が言うように、下川原さんは客とは距離を置いている。たとえ常連が乗ってきても、べらべらしゃべるわけではない。黙って運転席にいるだけだ。しかも、彼は印象が薄く存在感もないから、客はまるで自家用車に乗っているような錯覚に陥ってしまう。そしてそれは、下川原さんが自分の存在する気配を消してしまうせいだと私は思う。客が彼の車で安心して眠ってしまうのは、無人の車に乗っているような気分がするからだ。

世の中の経営者はセールスマンやサービスの人間に「個性を出せ」とか「存在感を示せ」と言う。しかし、果たして、それでいいのか、それが最上の策なのだろうか。たとえば私たちがタクシーに乗って不快になるのは無視されることではない。やたらとしゃべりかけられたり、詮索されたりすることだ。饒舌で、しかも土足で踏み込んで来る運転手、セールスマン、サービスの人間がいかに多いことか。私たちは、運転手と友達になるためにタクシーに乗るわけではない。個性豊かで話のうまい人を望んでいるのではないのだ。

その点、下川原さんは達人の域にいる。運転中は存在を消して車を走らせている。何か聞きたい時、あるいはトイレに行きたい気分になった時だけ、ふっと運転席に現れ、対応してくれる。(P187~188)

サービスの達人というと、人並みはずれたすごい技術やノウハウを持っている人を想像する。

しかし、北海道で「有名人を乗せて安心なのはこの人しかいない」と言われるタクシー運転手はむしろ、没個性である。

運転中は自分の存在を消してしまう、そして客が必要とした時だけ現れる。

しかし、サービスとはこのようなものなのだろう。

一般に行われているサービスは、どちらかというと押しつけがましいところがある。

かゆいところに手が届くというより、むしろお節介に近い。

妙に馴れ馴れしいサービスの人間もあまりいい気持ちはしない。

私たちがやってもらいたいとは思わないことまでやってしまうのはやりすぎだ。

そしてそれを最高のサービスだと言う。

しかし、ちょっと違うのではないだろうか。

本当のサービスとは、サービスをしている人が「自分の存在を消す」ことではないだろうか。

そのために重要なのはお客様との距離感である。

近すぎても不快になるし、遠すぎたら何もできない。

絶妙な距離感、これが重要だ。

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