だまされ上手が生き残る/石川幹人
人間の優れたウソつき戦術のひとつは、自分だまし(自己欺瞞)です。私たちは、無意識のうちに自分を欺いていることが、心理学者によく知られています。たとえば、7割ほどの人が「自分の能力は平均以上だ」と考えています。おかしいですよね!
自分のウソに自分がだまされて信じ込んでいれば、それを主張するときの説得力が増します。他人をだましているわけではありませんので、偽装あばきもできません。どうしてそんなありもしないことを信じているのだと、同情(ときには糾弾)されるだけです。
ところが、こうした「だまされやすさ」は、偽装のためだけではなく、人間が生きる上でも重要な機能を持つようです。
精神疾患というと、精神的機能が低下するものと通常思われますが、うつ病の人は、そうではない人にくらべて、自分の評価が適切にできる傾向があります。たとえば、「自分の能力は平均以下だ」などと、ちゃんと自分の評価ができるのです。
また、健常者は一般に、偶然のことであっても、それに自分の支配力がおよんでいるとの確信(妄想とも言えますが)をいだきやすいのですが、うつ病の人は、その度合いが低い傾向があります。結果的になにか良い出来事が自分にもたらされたときでも、それを自分の力でやったことではない、ただの偶然であると正しく判断できるということです。
うつ病の人は、こうした現実的な判断力をもつがゆえに、自己防衛の仕組みを発動できなくなっている可能性があります。もしくは、それが原因でうつ病になったのでは、とも考えられています。(P231~233)
「だまされやすさ」は人間が生きる上でも重要な機能だと著者は言う。
確かによくよく考えてみると、自分を客観的に見れないが故に、生きていけたという部分が多いということに気づかされる。
一般的に優れた人とは、自分を客観視する能力にたけていると考えがちだが、この本を読んでみて、むしろ、自分をうまくだます、思い込む力が強い人なのではないかと考えさせられた。
考えてみれば、夢とかビジョンと言っても、微にいり、細にいり検証されたものではない。
むしろ、その夢やビジョンに、好んでだまされるという行為がなければ、それに突き進んでいくことはできない。
つまり、ある面、だまされやすさとは、生きる力なのだと言える。
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