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2010年12月26日 (日)

情報のさばき方/外岡秀俊

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 これまで、「予断を持たない」ことがいかに大切かを書いてきましたが、疋田さんは一見、これと相反するようなことを、口癖のように語っていました。それは、現場に取材に行く前に「仮説を立てろ」という教えでした。先の聞き書きの中で、疋田さんは「これは誤解をされると困る話ですが」と断った上で次のように話しています。
 「現場のまなざしさをうまくすくいとるために何回か試みた私の方法がある。それは現場に行く前に、あるいはインタビューの相手に会う前に、たぶん現場はこうであろう。たぶんこの人はこういう人だろう。こういう発言をするだろうと、事前に自分の頭の中で架空の状況をつくってみるのです」
これでは、「予断をもつな」という教えの正反対ではありませんか。なるほどこれは認めた上で疋田さんはこういいます。「つまり先入観、固定観念にとらわれた頭で、これを承知でウソ記事をわざとでっちあげておく」。
 この先が大切な勘所です。「そうしておいてから、私は現場に行く。すると、もちろん私の貧弱な頭ででっち上げた情景、ストーリーとは違っているところがどんどん見つかる。逆に言えば事前に架空の記事を作っておいたために、それであえってナマの現場が細部までよりよく見えるということがあるのではないか。同じ理由で、現場に立ってはじめて知り得たことや感じたことを拾い集める作業の専心しやすくなる。そんな気がしたものです」。つまり、あえて意識的に先入観や固定観念を抽象化して仮説モデルをつくり、その仮説が現場で裏切られることを「発見」する作業をしろ、ということなのです。(P93~94)

仮説を立てることが大事であることはよく語られる。

しかし、その意味するところを誤解してとらえてしまっている人は意外と多いのではないだろうか。

その中の一つに、「仮説を立てると、それが固定概念や先入観となってしまい、目の前に起こっていることを偏った目で見てしまうのでは」というものがある。

これなどは「仮説を立てる」という意味を誤解している一つの例だと思う。

仮説を立てる目的は、あえて意識的に先入観や固定観念を抽象化して仮説モデルをつくり、その仮説が現場で裏切られることを「発見」する作業をすることにある。

つまり仮説とは、あたらないのが前提だということ。

そして、自分の考えが仮説に過ぎないのだということをはっきりと自覚しているということ。

物事を偏って見てしまうのは、自分が物事に対して固定概念や先入観を持っていることを自覚していないことからくる。

しかし、仮説を立てるということは、固定概念や先入観を、あえて、意識的に作る作業をするということであるから、意識しないで固定概念や先入観に陥っている状態とは全く逆である。

この点をはっきりと区別する必要がある。

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