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2011年2月12日 (土)

坂の上の雲(七)/司馬遼太郎

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 グリッペンベルグが大いに日本軍左翼の秋山陣地に攻勢をかけた。
グリッペンベルグは逐次増強されてくる日本軍とよく戦ったが、しかしながらグリッペンベルグの作戦構想をクロパトキンは消極的に裏切った。というのは、グリッペンベルグにすれば、かれが日本軍左翼に強烈な圧力をかけているあいだに、かねてうちあわせしたとおりクロパトキンが第一軍をもって、手薄になっている日本軍の中央を突破するはずであったが、クロパトキンはついに手をつかれてそれをしなかったのである。それをクロパトキンがしなかったのは、
「それをもし為して大勝をおさめれば功はグリッペンベルグにゆき、ロシア陸軍における自分の地歩は一時に失落する」
という理由であり、このことはふつうの国家にあっては信じがたい理由であったが、しかしながら専制国家の官僚というのは、国家へもたらす利益よりも自分の官僚的立場についての配慮のみで自分の行動を決定する。(P9~10)

強い組織か否かということを判断する基準の一つは、その組織が内向きか外向きかということにある。

当時のロシアの組織は明らかに内向きな組織であった。

内向きな組織の構成員は、組織の目的を達成することより、自分の保身を第一に考える。

日露戦争当時のロシア満州軍総司令官クロパトキンが典型例であろう。

著者、司馬遼太郎は、他のページで「ロシア軍の敗因は、ただ一人の人間に起因している。クロパトキンの個性と能力である」と断言している。

通常、戦争の敗因は、一人や二人の高級責任者の能力や失策に帰納されてしまうような単純なものではなく、無数の原因の足し算なり掛け算からその結果がうまれるものだが、

あえてここで著者が断言しているところに、大きな意味がある。

内向きな組織を称して、よく官僚的組織という表現が使われる。

確かに、日本の官僚組織を見ていると、明らかに内向きである。

よい企業とは顧客を第一に考えるものだ。

公務員にとっての顧客は、国民であるはずだが、どう考えても国民を第一に考えているようには見えない。

今日本を覆っている大きな閉塞感、

官僚組織にもその一因があるのではないだろうか。

今、日本は武力による戦争はしていない。

しかし、国家間の経済戦争は今後ますます激しさを増してくるであろう。

善きにつけ悪しきにつけ、官僚の役割が重要になってくることが予想される。

それだけに、内なる論理だけで動くことはやめてもらいたいものだ。

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