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2011年4月 3日 (日)

織田信長 破壊と創造/童門冬二

A9r2067

 この日、信長は宗易の志を知った。質素な四畳半の茶室に込めた深い精神性、茶席では何人もただの人に戻るという平等観に感銘を受けた。
 以後、信長は自ら茶の湯に没頭し、同時に部下に与える褒賞も、土地ではなく茶道具に変えていく。部下も信長の考えにマインドコントロールされる。土地をもらうよりも、茶碗や茶釜や茶筅をもらうことの方に「ステータスの向上」を感じ始めたのである。
 この新しい褒賞制度を確立するために、信長は特に「茶会の開催権」を厳しく制限した。めったに部下には茶会の開催を許さない。いきおい、「茶会を一回開ければ、例えようもなくその名誉と権威が高まる」という風潮が生まれ始めた。諸将は先を争って信長に「ぜひそのお茶碗を」とか「一度だけでも茶会の開催をお許しください」と願い出るようになった。(P161)

天下事業が進展するに従い、信長にはひとつの悩みが生じた。

それは、手柄を立てた部下に与える褒美の問題である。

これまでは原則として、占領地域を、その土地を制圧した部下に与えてきたが、

日本の国土は狭い。

土地だけに頼っていたのでは限りがある。

土地に代わって、部下が喜ぶ財物はないものかと、

しきりに物色している時に、頭にひらめいたのが茶道具だった。

うなるほどの財産を持つ堺の商人たちが、古ぼけた茶碗ひとつに目の色を変える。

そこにはいかなる価値が潜んでいるのか、信長は好奇心を募らせた。

商人たちが、金儲けだけでなく文化に心を寄せている状況は、

やはり知っておかねばならないと感じた。

そこで、自ら千宗易(後の千利休)のもとで、それを学び体験する。

そして、茶道の持つ精神性が、土地に代わる褒美として活用できるものであると確信する。

つまり、手柄を立てた部下に茶道具を与えることによって、

本人がステータスを感じるような雰囲気を作り上げた。

このエピソードは企業の報酬制度にそのまま適用できる。

会社で、成果を上げた社員に対して、

給料やボーナスといった金銭的報酬で応えようとしても、

それには限りがある。

また、それを重ねていくうちに、だんだん効果がなくなってしまう。

一時ブームになった成果主義がことごとく失敗した原因の一つはこのことによる。

そこで会社が考えるのが、金銭的報酬以外の、

社員の満足度を高めるような報酬はないのかということである。

そして、それに成功した企業は、事実、社員の満足度も高くなっている。

驚くことに、このことを、はるか四百年以上前に、信長は行っていた、

信長の先見性と発想の柔軟さには恐れ入る、

天才と言われる所以である。

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