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2011年5月26日 (木)

東電OL症候群/佐野眞一

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 思ってもみなかったのは、読者からの過敏とも思えるほどのすばやい反応だった。出版後一ヵ月もたたないうちに、百通を優に超す手紙とハガキが寄せられた。大半が女性読者、しかも泰子とほぼ同世代の女性からだった。それも予想外のことだったが、一番驚かされたのは女性たちの書評家以上の読みこみの深さだった。(中略)
 〈『東電OL殺人事件』、かなりのボリュームでしたが、半日で一気に読み上げました。読了後はしばし放心状態におちいりました。彼女には共感とはいかないまでも、ある種うらやましいという感じを受けました。それは彼女のような行動がとれることがうらやましいのではなく、何というか現代社会はあまりにも「こうあるべき」という他人の価値観をおしつけられる社会で、その価値観に合わないと「ダメな人」みたいに思われてしまうような気がします。彼女はそういう意味で自分の気持ちを爆発させてボーダーラインの向こう側にいってしまったのです。本当に私たちも心の中では“せとぎわ”に立たされていることも多いのです。この本が出ることにより、救われる女性も多いことと思います〉(三十代・女性)(P52~54)

1997年、東京電力社員、渡辺泰子さんが東京都渋谷区円山町にあるアパートの空室で殺害された。

当時、私は東京の渋谷にある会社で働いており、円山町と目と鼻の先にオフィスがあったため、強い印象が残っている。

この事件は大企業のOLという昼の顔と、売春を繰り返していた夜の顔とのギャップから、多くのテレビ、雑誌等で取り上げられた。

彼女は東京電力に初の女性総合職として入社。

未婚のエリート社員であったが、後の捜査で、退勤後は、円山町付近の路上で客を勧誘し売春を行っていたことが判明する。

被害者が、昼間は大企業の幹部社員、夜は娼婦と全く別の顔を持っていたことで、

この事件がマスコミによって興味本位に大々的に取り上げられた。

彼女はおびただしい好奇心のまなざしにさらされた。

興味深いのは、この「東電OL殺人事件」を著した佐野氏のもとに、出版後一ヵ月もたたないうちに、百通を優に超す数の手紙やハガキが寄せられたということ。

そして、大半が女性読者、しかも泰子とほぼ同世代の女性からだったということ。

多くの同年代の女性が、被害者である彼女に自分自身を見たということであろうか。

ここから見えてくるものがある。

彼女の存在を通してあぶりだされた今の日本が見えてくる。

「見られる」存在でしかなかった彼女を、「見る」存在に据えたとき、

政治も経済も社会もとめどない破局に向かってつき進む日本の今が、息ぐるしさをもって伝わってくるような気がする。

ジキルとハイドではないが、人間には光と闇の部分がある。

社会もまた、表の社会と裏の社会がある。

いろんな面で考えさせられる事件である。

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