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2011年6月15日 (水)

小説 ザ・ゼネコン/高杉良

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 「話は飛ぶけど、ゴルフ場は処分したのか」
 「いや、まだだ」
 「こんな調子で、土地や株が上がるのは、おかしいと思わないか」
 「株の業界紙に、アメリカのアナリストたちの間で東京市場のバブル論が出ているという記事を読んだ覚えがあるけど、俺はまだ強気論者に与するよ」
 「バブルって、あぶくってことだな。初めて聞く言葉だが、警鐘として受け止める必要があるように思うが」
 山本は、なんの脈絡もなく、新井哲夫の温容を目に浮かべていた。
 「長居したくない」と新井は言った。あのときは冗談と思って聞き流したが、本音だったのだろうか。
 和田征一郎の勝ち誇ったような顔も思い出されてならない。
 不意に言い知れぬ不安感に襲われ、山本は、身内のふるえるのを制しかねた。(P531~532)

上記はこの本の結びの部分、

バブルという言葉が出始めるころでこの小説は終わる。

その後、1993年から94年にかけて建設大臣、茨城、宮城の県知事、仙台市長、ゼネコン各社の首脳らが逮捕されるという、未曾有のゼネコン談合汚職に発展していくのだが、

まだ、株や土地さえ持っていればどんどん価格は上がるという神話に日本中が踊っていた時代がこの小説の背景になっている。

バブル崩壊前夜、大洋銀行調査役の山本泰世は、大手ゼネコン・東和建設への出向を命じられる。

拡大路線を走る同社社長の秘書となった山本は、建設業界のダーティーな実態を目にする。

公共事業と政治献金、株価操作…莫大な利権をもとに政界・官界と癒着した業界は、徹底した談合体質を有し、闇社会とのつながりも持っていた・・・と、物語は進んでいく。

建設業界を舞台に、日本の政治と経済の暗部に切り込んでいる作品だが、

このような連中が招いたのが結局のところバブルだったわけである。

そして、怖いのは、「あれはバブルだったんだ」とわかるのは、バブルが崩壊してからだということ。

バブルの中で踊っているただ中では、バブルだという認識は全くないのである。

最後に山本が「こんな調子で、土地や株が上がるのは、おかしいと思わないか」と語ったように、

どんな時代でも、「これはおかしい」と感じる感性を失わないことが必要なのではないだろうか。

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