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2011年6月25日 (土)

人の痛みを感じる国家/柳田邦男

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 ナチスドイツのユダヤ人大量虐殺の計画と実行の指揮者であったアドルフ・アイヒマンは、十五年の逃亡の末に逮捕され処刑されたが、裁判において、実にみごとに弁明したものだ。「私は専門的技術者としてヒトラーの命令を忠実に実行しただけであって、責任はない」と。これは究極の「乾いた三人称の視点」の証言と言えるだろう。
 このアイヒマンの弁明は歴史の彼方の他人事ではない。、ネット社会が大量生産している「乾いた三人称の視点」が引き起こしている様々な事件や事態に共通するものなのだ。残虐さの度合いやスケールの点で違いこそすれ、人間は状況や条件によって容易に「乾いた三人称の視点」に陥り、そうなると何をするかわからないということの究極の教訓として、アイヒマンの弁明は今に生きているのである。(P25)

他者を完壁なまでに「乾いた三人称の視点」でしか見なくなる究極の状況は何かと言えば、戦争であり民族対立や宗教対立による内戦や紛争であろう。

ナチスドイツよるユダヤ人大量虐殺、日中戦争下の旧日本軍による中国人の生体解剖、ベトナム戦争中の米軍によるソンミ村虐殺事件・・・等々、数え挙げると切りがない。

仮に自分の家族だったら、仮に同じ地域の住民同士だったら、こんな殺し方はしないという残虐行為をやってしまう。

戦争や紛争のさなかにおいては、対立する相手はもはや同じ人間としては見られなくなってしまう。

愛する家族のいる人間としては見られなくなってしまう。

動物以下のただ憎むべき、ただ抹殺すべき存在でしかなくなってしまう。

これを柳田氏は「乾いた三人称の視点」という。

そして、これは戦争という究極の状態でだけ起こるのかといえば、そうではない。

むしろ、ネットというバーチャルな世界で、日々繰り広げられている。

ネットの特徴の一つに匿名性がある。

攻撃される者は実名がわかっているにもかかわらず、攻撃する者は匿名である。

そして匿名であるが故に、益々攻撃的になり、凶暴さを増す。

現実の社会では、自分の顔を隠すことができないが故に覆われている人間の闇の部分が、

ネットという匿名性が守られるバーチャルな世界では、解き放たれてしまう。

場合によっては、暴走することもある。

ネットの負の部分である。

もはや無視できないほど大きく成長したネット社会、

今や、ネット抜きの社会には戻れないであろう。

だったら、うまく付き合っていくことが必要だ。

ネット社会によって解き放たれた猛獣を、うまく飼い慣らすことが必要だ。

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