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2011年7月16日 (土)

海の都の物語 6/塩野七生

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 海に生きていた時代のヴェネツィアの社会では、貧富の差が固定していなかった。つまり、格差はあっても流動性があったのだ。(中略)
 主要な商船は国有にして、個人で船を所有できるだけの資力のない者にも均等な機会を与えたヴェネツィアでは、「敗者復活戦」が、最も理想に近い形で機能していた。
 ところが、工業に、次いで農業に重点が移るようになってくると、資本のない者には活躍しにくい状態に変ってくる。手工業も農園経営も、資本のない者には単なる傭い人の機会しか与えられない。「敗者復活戦」がなくなれば、豊かな者はますます豊かになり、貧しい者には、それから脱け出す機会が、ますます少なくなることを意味する。海洋国家時代のヴェネツィアが、なによりも嫌った独占が、ヴェネツィアの社会を侵しはじていたのであった。
 独占の弊害は、それが経済的な必要以上になされることによって、社会の上下の流動が鈍り、貧富の差が固定化し、結局は、その社会自体の持つヴァイタリティの減少につながるからである。(P85~87)

ヴェネツィア共和国が衰退した原因の一つに、貧富の差の固定化による社会自体の持つヴァイタリティの減少がある。

これにより、国全体の活力が失われていき、国の衰退につながっていく。

問題は、格差があることでなく、格差が固定化すること。

努力したものが報われる社会、これは健全な社会である。

努力してもしなくても、最初から社会の勝者と敗者が決まってしまっている、

つまり、格差が固定化してしまっている、

これが問題だということ。

「敗者復活戦」がちゃんと機能している社会である必要がある。

海洋国家であった頃のベネツィア共和国にはこれがあった。

そのため、国民にヴァイタリティがあり、国全体の活力につながっていた。

ところが、後期のヴェネツィア共和国は、農業や工業が中心になった。

そうすると、資本のあるものは勝ち続け、ないものはいつまでもその状況から抜け出せなくなる。

それまでの「敗者復活戦」の機能が失われていく。

そして、国全体の活力が失われていく。

結果として、ヴェネツィア共和国は衰退していく。

今、日本も格差社会が問題になっている。

特に問題なのは、格差が固定化していること。

滅びる前のヴェネツィア共和国とよく似てきている。

日本はもっと歴史に学ぶ必要がある。

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