« 後藤田正晴と十二人の総理たち/佐々淳行 | トップページ | 吉越式会議/吉越浩一郎 »

2011年7月23日 (土)

なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか/牧野知弘

A9rfe1d

 平成初期のバブル時代、世の中は好景気に沸き、不動産価格が高騰し、一般庶民にはもうマイホームも手に入らない、ということが新聞や雑誌でも盛んに喧伝されました。
 当時は、本書でいうギャンブラーが宴を繰り広げていた時代でした。買って売るだけで巨万の富を稼げる時代にあって、度胸と根性だけで世の中を渡る、無節操なギャンブラーたちが幸福を掴んだかにも見えました。
 そんな光景を見て、新聞雑誌は、値上がりを続ける土地を目の敵にしました。政府の地価高騰に対する無策を非難し、土地の存在こそが、世の中を悪くするかのような、ヒステリックな論調を展開させました。
 ここで登場したのが、「地価は下げなければならない」という、信じがたいほどに観念的な意見でした。そして、どうやったら地価を下げられるか、という議論が連日、真面目に繰り返されました。(P234)

バブル崩壊は明らかに政策の失敗である。

資本主義の世の中では、需要と供給の不一致が長期にわたって続くことはきわめて稀なこと。

多くの人が住宅を買えない、高すぎて借りられないという事態に陥れば、やがて住宅は高値では売れなくなり、高値では貸せなくなるのが資本主義の原則。

ところが、バブル崩壊前夜、世の中のマスコミや一部の学者たちのエキセントリックな声に押されたのか、当時の政府や日銀はあわてて、徹底的な地価対策を講じた。

具体的には、国土計画法による一定規模以上の土地取引における価格の届出制度の制定、

金利の大幅な引き上げ、

地価税の新設、

一定規模以上の土地を保有するだけで固定資産税とは別の新たな税金をかけることまで行ない、土地を持つことに対して徹底した規制をかける。

さらにこれらの施策にとどめを刺すかたちで、金融機関に対して不動産関連融資の実施をほぼ全面的に規制する指導を行なうに至る。

このような人為的でかつ意図的な施策は、結局ギャンブラーが、マーケットからの退場を迫られるだけでは終わらなかった。

やがて土地を基盤として成り立っていた経済の信用構造を根底から崩し、一般企業の多くを信用危機、倒産に追い込む。

また、これらの企業に資金を貸し付けていた金融機関には不良債権が山積みされ、経営の屋台骨をも揺るがす事態へと発展する。

これがバブル崩壊である。

当時、「土地神話の打破」だとか「地価は絶対下げられる」といった論調の背景にあったものは、土地の持つ本質を理解したものではなかった。

「土地は害悪の象徴」といった、土地を軽く見て、侮蔑しようとする人たちの思い込みが中心だった。

そんな一部の声の大きな人たちの主張に引きずられて、土地の本質を無視した犯人探しと徹底的な規制の網かけを実行してしまった当時の政府の施策の数々は、世の中に大きな歪みと混乱をもたらす。

その結果、ギャンブラーのみならず、一般の市民をも巻き込む深刻な経済混乱を招くこととなる。

つまり、バブル崩壊とは土地の本質を見誤った政策の失敗である。

しかし、この一方に偏重しすぎた世論。

それを煽動するマスコミ。

更に、そのような世論を政争の具にしようと企てる政治家。

今の脱原発の議論の構図と酷似している。

同じ失敗を繰り返さねばいいのだが・・・

« 後藤田正晴と十二人の総理たち/佐々淳行 | トップページ | 吉越式会議/吉越浩一郎 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか/牧野知弘:

» 天王寺の賃貸と賃貸契約時の注意点 [天王寺賃貸人の森川]
大阪天王寺区の賃貸マンションの空室状況や不動産裏話〜近所の美味しいお店などを配信してます。大阪の人はぜひ遊びにきてください。 [続きを読む]

» 若江岩田の賃貸や住まい〜賃貸契約のミソ [東大阪の賃貸マンション]
東大阪市〜若江岩田〜というところの賃貸マンションの空室案内や不動産会社で契約するときの注意点などを掲載中です。 [続きを読む]

» 放出の賃貸や住まい〜賃貸契約のミソ [東大阪の賃貸マンション]
放出〜というところの賃貸マンションの空室案内や不動産会社で契約するときの注意点などを掲載中です。 [続きを読む]

« 後藤田正晴と十二人の総理たち/佐々淳行 | トップページ | 吉越式会議/吉越浩一郎 »