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2011年7月27日 (水)

大局観/羽生善治

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 その加藤先生は指し方にもこだわりがあって、同じ作戦を何度でも納得されるまで繰り返して指す。
 相手も当然、それに合わせて研究をしてくるので、狙い撃ちをされやすい。野球にたとえるなら、どんなに速い球が投げられたとしても、球種がわかっていれば打ちやすいのと同じだ。
加藤先生もそれは承知のはずだが、信念として同じ作戦を貫いておられるようだ。(中略)
 勝率的な観点からいえば損をしているのではないかと、私は思っていたのだが、最近は少し見解が変わって来た。
 加藤先生は、何百局も同じ作戦を繰り返し指すことによって、その戦法の真髄を理解し、他の棋士には真似のできない技術を得ているのではないか。
 だからこそ、七十代になっても元気でモチベーションも高く対局に打ち込むことができるのではないだろうか。(P94~95)

羽生氏は「繰り返し」の重要性を、加藤一二三九段の例を上げて説いている。

加藤九段は史上初の中学生プロ棋士であり、弱冠十八歳にして、将棋界のトップが名を連ねるA級に昇級、この記録は現在まで破られていないという。

「神武以来の天才」と謳われたほどだから、早熟型の天才タイプと思われがちだが、実は七十代になった今も元気に現役で活躍しているとのこと。

その加藤九段、将棋の指し方以外の日常においても、徹底した繰り返しを貫いているとのこと。

例えば対局中、食事の時は昼も夜も同じ物を出前で注文する。

それも一局に限らず、半年とか一年の長期にわたって、ずっと同じ注文をするのだという。

寿司なら寿司の時期が半年間、天ぷら定食なら天ぷら定食の時期が一年間、という具合に継続する。

慣れている塾生だと、食事の注文を聞きに行く前から、加藤先生のオーダーだけは注文表に書いておき、おつりまで用意していたりするとのこと。

だから、加藤九段がいつものと違った注文をすると将棋会館のなかに大きな衝撃が走るという。

そういえば、一流と言われる人たちの中で、ルーチンを大事にしている人は意外と多い。

例えば、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏。

毎朝必ず8時2分に家を出て勤務先の京都産業大学へ通う。

駅で立つホームの位置から乗車する車両、その中での位置まで全く同じ。

帰宅してからの風呂は夜9時36分と決まっているという。

メジャーリーガーのイチロー選手も、打席に入るまで、毎回同じ動作を分刻みで寸分違わず繰り返している。

そういえば、哲学者カントは毎日 同じコースを同じ時刻に散歩をして、沿道の人々はそれを時計代わりに使っていた、という話を何かの本で読んだことがある。

このような例をいくつか見つけると、このような行動は、高いレベルの仕事をする人に共通する、普遍的一般的な行動パターンなのかもかもしれない。

通常軽視しがちなルーチンワークだが、意外とこの部分に能力を高め、よい仕事をするための秘訣があるのかもしれない。

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