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2011年7月19日 (火)

あざやかな退任/高杉良

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「人間、出処進退はきれいにせんとな。問題は後継者が育てられるかどうかだ。自分がトップの椅子にしがみついていたい一心で、有能な者をスポイルしたり、しりぞけてしまうやからが、そこらに掃いて捨てるほどいるじゃないか。二期や三期無配がつづいても平気な顔で居坐る。七十、八十の爺さんが現役でがんばってるというのは老害以外のなにものでもないな。頭が硬くなっているから、フレキシブルな判断ができず、会社をあやうくするようなことになるんだ。私はそんな老醜をさらすのはまつぴらだ」(P43)

上記は、東京電子工業のワンマン社長、石原修が病床で語った言葉。

石原は日本触媒の創業社長、八谷泰造がモデルと言う。

石原はいったんは退院したものの、その後まもなく急死する。

忠実な番頭役として石原に仕えてきた副社長の宮本正男は、悲しむ間もなく、後継社長を決めなければならなくなる。

筆頭候補は唯ひとり代表権を持つ自分だった。

もちろん、宮本にも野心がある。

社長になりたくないわけではない。

しかし、自分がなってしまった場合、自分の後には、東京電子工業を支配下におこうとねらっている東亜電産から派遣されてきた専務の野村周造が社長になることになる。

更に、東亜電産社長の佐竹武夫は、会長は宮本、社長は野村、の線で一気に支配下におこうと圧力をかけてくる。

どうしたらいいのか?思い悩む宮本を主人公としてドラマは進行する。

そんな中、石原が生きていたら、まちがいなく後継者にしただろうと宮本が思う男が、常務の吉田敏明だった。

技術屋の吉田は一本気で、オーナー社長の石原にも臆せず言いたいことを言ってきた。

真正面から石原に反対意見をぶつけるのは吉田くらいだったが、石原もさすがで、そうした吉田を逆にかわいがってきた。

最終的に、宮本は、常務の吉田を一気に社長に昇格させ、自分は専務の野村を抱いて相談役に退き、東亜電算色を一掃することを決断する。

まさに「あざやかな退任」である。

宮本を決断に導いたのは、おそらく病床の石原が語った言葉ではなかったかと思う。

指導者が自分の権力に恋々とし、地位に執着してしまうことの害悪、出処進退の重要さを宮本は石原から教えられた。

しかし、周りを見渡すと、引き際を間違って晩節を汚してしまう経営者は後を絶たない。

いかに自分の権力や地位を捨て去ることが難しいか、ということであろう。

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