仕事を通して人が成長する会社/中沢孝夫
このように頑張っている久保社長は、経営に関して少し辛辣なところがある。例えば「不況で倒産が増えているといわれていますが、景気が理由で経営が立ち行かなくなるのではなく、時代に適合できないところがつぶれるのです」と言う。たしかにそれはいえる。景気はきっかけに過ぎない場合が多いのだ。景気の悪化が、その会社の欠陥を明るみに出してしまうのである。(P150)
一代で全国区の豆腐屋を創り発展させている幸伸食品の久保社長。
福井県の永平寺町で、胡麻豆腐を中心とした各種の豆腐の製造販売と、豆腐料理のお店を開いている。
従業員数は35名。
パートもアルバイトもいるけれど、正社員にならないのは勤務時間などを理由とする本人の都合であって、会社の都合ではない。
だから全員が社会保険に加入している。
継続し発展している会社の経営者は、みな自らの「経営」や「仕事」に関する「哲学」あるいは「説明する力」をもっている。
久保社長もその一人。
会社の基本方針は、理念としての「健康と幸せ」と、「量ではなく質を追う」となっている。
「量」を追いかけると大企業に負けるからだという。
また「質を追いかける」とは、商品の質と経営の質をともに向上させるという意味があるそうだ。
会社の具体的な戦略も、この理念を具体化する形で落とし込まれている。
驚くことに、この規模で、「世界への発信」を考え、もう具体的に動き、試行錯誤を重ねている。
このように経営に真剣に取り組んでいる久保社長だからこそ、「景気が理由で経営が立ち行かなくなるのではなく、時代に適合できないところがつぶれる」と言えるのだろう。
確かに今は経営者にとっては大変厳しい時代だと言える。
しかし、そのような環境にあって、言い訳をせず経営努力を更に重ねる経営者と、国や自治体に要求や文句ばかりを言っている経営者がいる。
今はある意味、経営者がふるいにかけられている時代だとも言えよう。
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