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2011年8月 5日 (金)

恐怖の存在(下)/マイクル・クライトン

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 人間の思いこみの歴史は教訓に満ちている。人類は同胞である人間を、その者たちが悪魔と契約し、魔女になってしまったという思いこみだけで、何千人も殺した歴史を持つ。じっさい、いまなお年に千人以上もが、魔術を使ったという理由で殺されている。私見では、カール・セイガンのいう過去の“悪魔にとり愚かれた世界”から人類を救える希望の星は、たったひとつしかない。科学だ。
 しかし、いみじくもオールストン・チェイスがいっているように、
 「真実の探求が政治的意図でひっかきまわされるとき、知識の探求は権力の追求に堕する」
 これこそは、いまのわれわれが直面している危機にほかならない。科学と政治の混合は悪い組み合わせであり、悲惨な歴史を生んだ理由もそこにある。われわれは歴史を憶えておかなくてはならない。そして、世界にまつとうな知識として提示するものが、利害関係ぬきの、公平無私で公正なものであるようにしていかなければならない。(P400)

この小説で説いている環境問題は、そのまま今の日本の原発問題の議論に置き換えることができる。

地球温暖化を率直に批判する者の多くが、引退した教授であるという。

理由は、彼らはもはや研究補助金の心配をする必要もないし、下手に批判をして同僚が補助金をもらえなくなったり出世できなくなったりする心配をする必要もないから。

つまり、真実を探求するはずの科学者が、補助金欲しさに時の権力者の意向に沿った形で結論を捏造してしまっているということ。

これはそのまま原発のヒモつき御用学者が生まれる構図に置き換えることができる。

科学者の使命は真実を探求し明らかにすること。

しかし、科学者といえども国からお金が支給されなければ何もすることはできない。

結果として、お金を出してくれている時の権力者の意向に沿った形に結果を捏造することになる。

原発の安全性に問題があるとわかっていても、それを勇気を持って言える科学者が出てこない所以である。

これこそ、今、世界が直面している危機にほかならない。

この小説は環境問題を取り上げているが、今の日本の原発問題に置き換えて読んでみても非常に面白い。

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