これで世の中わかる!ニュースの基礎の基礎/池上彰
文化庁のまとめでは、日本の宗教の信者の数を全部合わせると2億2000万人になるといいます。なんと日本の人口の倍近くになります。中には信者の数を実際より多く発表している宗教団体もあるかもしれませんが、日本人の多くは、神社の氏子であると同時にお寺の檀家でもあります。神社やお寺など、それぞれの宗教団体が、信者の数として報告するので、こうしたことが起きるのです。
こういう行動をとる日本人を、世界の人たちは不思議がります。「あなたは、いったいどの宗教を信じているのか」と聞くことでしょう。そこで、「さあ、考えたことないなあ」などと答えると、ますますびっくりするはずです。宗教を信じない人は、「無宗教」という、世界ではあまり一般的ではない特別な考え方を持った人だと思われるからです。
あなたが無宗教だと知った途端、相手はよそよそしい態度に変わって、あなたから離れていくということが起きるかもしれません。
世界にはさまざまな考え方があって、「一般的な常識」というものは、あまりないのですが、宗教だけは違います。一般的な常識が存在するのです。それは、「人は何かの宗教を信じているもので、信じている宗教以外の宗教の行事には参加しない」というものです。(P99~100)
たとえば、クリスマス。
日本人は誰でもクリスマス・パーティーをしたり、クリスマス・イブにはケーキを食べたりする。
独身の男女で、クリスマスイブには必ずデートすることにしている人も多い。
中にはクリスマスカードを送ったりする。
しかし、そもそもクリスマスはイエス・キリストの生誕を祝うキリスト教徒のお祝い。
そしてキリスト教徒でもないのに結婚式はキリスト教式で行う人も多い。
そして同じ日本人が葬式は仏式で行う。
おそらく外国人からみたら「日本人はわからない」ということになるのだろう。
以前「日本の常識は世界の非常識」という言葉が流行った。
日本人は自分のことを無宗教だとよく言うが、外国人からみたらそれは「人間ではない」というのと同義語だと聞いたことがある。
日本の国際化が叫ばれている昨今だが、宗教に対する根無し草的な態度は、意外と外国人に不信感をもたらしているのかもしれない。
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