「みんなの意見」は案外正しい/ジェームズ・スロウィッキー
この日、市場が賢い判断を下せたのは、賢い集団の特徴である四つの要件が満たされていたからだ。意見の多様性(それが既知の事実のかなり突拍子もない解釈だとしても、各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている)、独立性(他者の考えに左右されない)、分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)、集約性(個々人の判断を集計して集団として一つの判断に集約するメカニズムの存在)という四つだ。
この四つの要件を満たした集団は、正確な判断が下しやすい。なぜか。多様で、自立した個人から構成される、ある程度の規模の集団に予測や推測をしてもらってその集団の回答を均すと、一人ひとりの個人が回答を出す過程で犯した間違いが相殺される。言ってみれば、個人の回答には情報と間違いという二つの要素がある。算数のようなもので、間違いを引き算したら情報が残るというわけだ。(P31)
専門家が一人で考えるよりも、みんなが意見を出し合ったその集合知の方が正しいことが多い。
例えばウィキペディアやリナックス。
それを形成しているのは、数えきれないほど多くの人々の知恵や知識。
中には専門家の意見も入っているのだろうが、大部分は普通の人々。
ただし、集団の意見が必ずしも正しいとは限らない。
むしろ、歴史をみれば、「民衆の愚」と言えるような出来事が掃いて捨てるほどある。
だから、この著書の題名も「みんなの意見は『案外』正しい」となっている。
「『絶対』正しい」ではなく、「『案外』正しい」というのがポイント。
衆人の知が正しくなるのは条件つきということ。
その条件とは、
第1に、意見の多様性。
第2に、独立性。
第3に、分散性。
第4に、集約性。
この4つの条件が満たされた時、集合知となる。
逆に言えば、その4つが満たされるような仕組みを作り上げることが、集合知を活かすことにつながるということ。
しかし、この本を読んで、インターネットの出現によって、知の創造という面でも、全く新しい時代に突入したんだということを実感させられた。
« 器量と人望 西郷隆盛という磁力/立元幸治 | トップページ | 憂鬱でなければ、仕事じゃない/見城徹、藤田晋 »
コメント