なぜフランスでは子どもが増えるのか/中島さおり
日本人の目から見ると、フランスはあまり子ども中心の社会ではない。
従って、妙齢以上の女性も「イコールお母さん」という雰囲気を漂わせていない。(中略)
「恋愛大国フランス」というのは、社会の中に男女が仲良く共存し、誘惑し誘惑される色っぽい関係を潜在させている社会、つまりフランスで「ミクシテ」と言われている内容を指す、と考える。そして、女性をまず、男性に対する女性とするような構図のなかでは、「母であること」の比重が軽くなる。女性は子どもを産んでも、美しく、男性にとって魅力的であること、また外の社会に対しての社交性を求められる。従って、母親というアイデンティティ一色に染まらなくてもよい。つまり、子どもを産むことによって失うものが比較的少ない。
だから、「〈恋愛大国フランス〉に子どもが増える」というロジックを、私なりに説明するのであれば、「母より女のフランスでは、逆説的に女が産むことに抵抗がなく、従って子どもが生まれる」ということになるのではないか。
いささか「風が吹けば桶屋が儲かる」式ではあるけれども。(P86~88)
先進国の中で唯一、少子化対策に成功したフランス。
じつはかつては世界でいちばん少子化が進んだ国でもあった。
少子化に悩む日本にヒントになることがあるのではという思いから読んでみた。
大きく違う点がある。
それは、日本人は子どもを生み育てるために、自分を犠牲にするという考えが今でも根強いが、フランス人には全くそれがないということ。
たとえば、日本人の女性は、結婚し子どもを生むと「母」になる。
一方、フランス人の女性は、結婚し子どもを生んでも、依然として「女」のままである。
女としてより魅力的であろうとし、また女として人生を楽しもうとする。
子どもの為に自分の人生を犠牲にするなどという考えは毛頭無い。
しかも、託児所やベビーシッターといった社会的にもサポートする仕組みができあがっている。
フランスでは、結婚の前に子どもが生まれるケースが多いというが、それによって周りから白い目でみられることもない。
日本だと、できちゃった婚というとあまりよいイメージがないが、フランスだとごくあたりまえのこととして認めてもらえる。
つまり、子どもを生むことによって、失うものがないため、かえって子どもを生み易くなる。
その結果、出生率がアップしてきたということではないだろうか。
そう考えると、日本人の自己犠牲の精神がそろそろ金属疲労を起こし始め、その結果が少子化という形で表れてきていると言えるかもしれない。
何事も無理は長続きしないということだろう。
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