« なぜフランスでは子どもが増えるのか/中島さおり | トップページ | 凛とした生き方/金美齢 »

2011年9月22日 (木)

渋沢栄一 人生意気に感ず/童門冬二

Bt000012659900100101_tl  栄一はその構想をまとめ、「日本に合本主義とバンクを導入しよう」
 と心に決めていた。大蔵省を辞めるときはすでにその構想の現実化がはかられていた。第一国立銀行の設立である。心ある友人たちは、
 「きみのような有能な人物が国家から去るのはじつに残念だ。まして私利私欲にはしりがちな民業に携わるのは無謀である」
 といった。この言い方も栄一にはカチンとくる。
 「ご忠告ありがたいが、わたしにはいささか信じるところがあるので、思ったとおりにします。わたしが有能であるとみてくださることは感謝にたえない。しかしあなた方がいうように、わたしが有能であればあるほど、わたしは官界をさらなければいけないと思っています。というのは、有能な人材が官界に集まって、能力のない者ばかりが民業に携わるとしたら一国の健全な発達は望めません。
 はっきりいいます。官吏は凡庸の者でも勤まります。しかし商工業者は相当才腕がなくては勤まりません。」

渋沢氏は、退官後間もなく第一国立銀行を設立し、以後は実業界に身を置く。

また、第一国立銀行だけでなく、七十七国立銀行など多くの地方銀行設立を指導した。

第一国立銀行のほか、東京ガス、東京海上火災保険、王子製紙、秩父セメント、帝国ホテル、秩父鉄道、京阪電気鉄道、東京証券取引所、キリンビール、サッポロビール、東洋紡績など、多種多様の企業の設立に関わり、その数は500以上といわれている。

どういう思いでこのような精力的な活動を行ったのか。

それは渋沢氏の「有能な人材が官界に集まって、能力のない者ばかりが民業に携わるとしたら一国の健全な発達は望めません」ということばに端的に表れている。

これから日本の国力を上げるためには、民業の活性化がカギになるとみていたのだろう。

あの当時、これだけの先見の明を持っていたとは、すごいことだ。

しかし、渋沢氏が友人たちから言われたという「きみのような有能な人物が国家から去るのはじつに残念だ。まして私利私欲にはしりがちな民業に携わるのは無謀である」ということば、

このことばの裏に見え隠れするのは当時の官尊民卑の考え方。

そして、現在も相変わらず、官尊民卑の考え方は官僚の中には根深いようだ。

« なぜフランスでは子どもが増えるのか/中島さおり | トップページ | 凛とした生き方/金美齢 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

童門冬二さんって東京都の副知事でしたよね。
温故知新で、歴史を今の政治に活かすことをしていたのかな?と思います。
ちょっとしたコラムも面白く読みやすいですね。

Lisaさん、コメントありがとう。
竜門冬二氏の文章の特徴は、
いつも現代と過去を往来しているという点です。
先の見えない今の時代だからこそ、
歴史に学ぶことが必要だと思っています。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 渋沢栄一 人生意気に感ず/童門冬二:

« なぜフランスでは子どもが増えるのか/中島さおり | トップページ | 凛とした生き方/金美齢 »