経営戦略の教科書/遠藤功
どんなに多くの情報を集めても、またその情報の分析にどれほど力を入れようとも、立案段階で完璧な経営戦略にはなりえません。
なぜなら、市場や顧客は絶えず変化し、その変化に従って競争を変化するからです。「分析は過去の情報に基づくものであり、そこから未来が読めるわけではない」という事実を直視し、そこから打ち出した経営戦略は「仮説」にすぎないことを認識しておく必要があります。
企業にとって経営戦略が必要かどうかと言えば、当然必要だと言える。
ところが、私が普段関わっている中小企業に限定して考えると、「必要ない」と答える経営者が多い。
理由を聞いてみると、「どうせ机上の空論だから」「理論と現実は違うんだ」といった答えが返ってくることが多い。
しかし、ここには経営戦略そのものに対する大きな誤解がある。
つまり、経営戦略とは、その通りやれば企業が儲かる唯一絶対の解であるという受け止め方である。
この世の中に唯一絶対の解などというものがあるのだろうか。
そうではなく、経営戦略とはあくまで「仮説」なのだ。
「仮説」であるならば、「検証」が必要である。
つまり、経営戦略を立てるのは「仮説」「検証」のサイクルを回すため。
そう位置づけたほうがよい。
要するに、打ち出した経営戦略が妥当かどうかは、最終的にはやってみなければわからない。
どんな経営戦略も「間違っているかもしれない」「うまくいかないかもしれない」というリスクがあるということ。
「それならば、戦略なんて意味ないじゃないか」と思うかもしれないが、それは違う。
たとえ「仮説」であっても、経営戦略がなければ経営の目標が定まらない。
次のアクションが起こせない。
それこそ行き当たりばったりの経営になってしまう。
大事なことは、経営戦略が「仮説」であるということをしっかりと認識し、「絶対視」しないこと。
とりあえず、経営戦略という「仮説」を立て、それをやってみる。
しかし、それを絶対視することなく、必ずそれが本当にうまくいったのかどうか「検証」すること。
そして、その「検証」をもとに、また新たな戦略という「仮説」を立てる。
これを繰り返せば、中小企業といえども必ずよい会社に変わることができる。
問題は、戦略をどう位置づけるかということである。
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