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2011年10月10日 (月)

行動分析学マネジメント/舞田竜宣+杉山尚子

_  行動の問題が起きたとき、多くの人は、やる気、能力、意識、意欲のように、心の中に原因があると考える。これが医学モデルである。すなわち、身体の中の変調が原因で病気の症状が現れるように、心の中の問題が原因で行動に問題が起こると考えるわけである。
 医学モデルを使って行動の問題の原因を見つけようとすることには、二つの弊害がある。一つは、循環論にはまり、本当の原因を見つけられないことだ。
 満足な仕事をしないことの原因は、「やる気がない」ことだと考える。それでは、なぜその部下が「やる気のないやつ」だとわかるのだろう。それは、期日までに仕事を仕上げないし、質の低い仕事しかしないからである。すなわち、「やる気のなさ」というのは、「満足な仕事をしない」ことの言い換えにすぎない。やる気というのは、その人の行動につけられたレッテルなのであって、行動の原因ではないのである。
 二つ目は、他人のことにせよ、自分のことにせよ、行動を心や性格で説明しようとすると、結局最後は個人攻撃になって、肝心の問題が解決しないからである。「あいつはやる気がないから」「私は意志が弱いから」と言うのは、単なる批判や自己弁護である。心理的な問題に関しては、この種の評価をするだけで終わるケースが多いが、そう言ったところで、問題解決にはつながらない。(P15~16)

部下が成果を出さないとき、上司が一番よく使うのは「もっとやる気を出せ」という言葉。

それでも成果が出ないと「あいつはやる気のない奴」とレッテルを貼る。

すべて「やる気」のせいにするところに大きな問題がある。

そのように行動の原因を、やる気、意欲のように、心の中に原因があると考えるのを医学モデルと言う。

これに対して、本書では行動分析学を活用することにより、人間の行動は変わるということを、架空の会社ノルウェー・モバイル社を舞台に解説していく。

行動分析学の創始者、スキナーが発見した行動の原理で最も重要な点は、「行動は、行動直後の結果によって制御される」というもの。

たとえば、たばこがやめられないのは、たばこをすった直後の快感を身体が覚えてしまっているから。

だからたばこをやめられない。

つまり、たばこを吸うという行動は、たばこを吸った直後の快感によって制御されている。

スキナーは数多くの実験を通して、特に行動の頻度に着目し、その行動が今後も繰り返されるか、それともしなくなってしまうかは、その行動をした直後に何が起こるかで決まってくると結論づけた。

人はなぜ仕事をするのか。自己実現のため?給料のため?昇進のため?行動分析学の立場からは、そのどれでもない。

行動は、直後の結果によって制御される。この「直後」とは、まさに“直”後であるほど効果的。

行動分析学では、目安として、「60秒ルール」と呼ぶように、行動をしてから60秒以内に起こらない結果は、ほとんど意味がないと考えている。

仕事をしてから60秒以内に白己実現ができたり、給料がもらえたり、昇進するなどということは現実にはありえない。

したがって、自己実現や、給料、昇進は、人々が仕事をすることを動機づけるような直接の原因にはなりえないのである。

自己実現、給料、昇進が働くことの動機づけにならないとしたら、どうやって社員がいきいきと働けるような会社を作れるのだろうか。

本書は、それについて事例を交えて様々な手法を紹介している。

いかにもアメリカ的な合理的・科学的考え方だが、何事も「やる気」という精神論で片づけてしまいがちな日本人にとっては、別な視点を与えてくれるという意味で、価値ある本ではないかと思った。

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