オンリーワンは創意である/町田勝彦
全員が席につくなり、私は切り出した。
「シャープの将来について、私の考えをみなさんに説明したいと思い、お集まりいただきました。当社の経営理念は、“いたずらに規模のみを追わず、誠意と独自の技術をもって”という一文から始まっています。これからのシャープの目ざすべき姿は、ナンバーワン企業ではなく、オンリーワン企業であると考えます。つまり、世界の中で、独自の特長がキラリと光る企業です。そして、その“オンリーワン経営”の柱になるものこそが、液晶です。私は、国内で販売するテレビのブラウン管を、21世紀に向けてすべて液晶に換えたいと思います」突然の私の発言に、居合わせた誰もが、信じられないといった表情を向けた。(P10)
今でこそ、AQUOS(アクオス)といえば、液晶テレビの世界的な代名詞となっているが、
当時シャープは、特徴のない企業であった。
テレビ事業も肝心のブラウン管は外部調達、
自前のテレビすらもつくることのできない企業だった。
そんな中、町田氏のこの宣言だ。
内容は液晶テレビへの選択と集中。
ここからシャープはブランドの構築へと邁進する。
そしてやがてAQUOSをトップブランドに導く。
また、その過程で「日本で製造業を極める」と宣言し、液晶テレビの生産拠点として三重県に亀山工場を建設する。
それは日本中から「メイドインジャパン」復活として喝采を浴びた。
シャープ激動の10年の軌跡は、21世紀の日本企業のあり方、方向性に、大いなる示唆を与えてくれる。
そしてそのスタートは、町田氏の社長就任間もない時期の、この宣言から始まった。
リーダーシップとは何かを考えさせられる言葉だ。
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