孫正義 リーダーのための意思決定の極意
そのときの株主総会。まさにこの部屋ですよ。全員、目が三角になっている。入るなり「ペテン師!」「うそつき!」「泥棒!」。もうむちゃくちゃですよ。
それでも私は一生懸命に説明しました。6時間だったか、おそらくソフトバンクの株主総会で最長です。休憩なしでぶっ続けでやりました。
一人で全部受けて立った。いっさい逸らさないで、真正面から答えた。最後には非難囂々だった何千人かのうち、三分の一以上の人がハンカチ出して泣いていました。
それは総会の最後に、一人のおばあちゃんの発言があったからなんです。
「私は主人の遺してくれた退職金の1000万円全部でソフトバンクの株を買いました。それは孫さん、あなたの夢を信じたから、あなたのその夢と志を信じたからです。
遺産すべてを注ぎ込んで、1000万円が10万円になってしまった。
だけど、私に悔いはありません。今日、あなたの話を直接聞いて、あなたの夢に賭けて良かったと、心から思いました。信じていますから頑張ってください」
たまりませんでした。その方の姿がいまでも眼に焼きついて離れないんです。
上記は、孫氏が自身の後継者育成のために開いた学校、「ソフトバンクアカデミア」で語った言葉。
講義は様々な設問に対して、どのように判断するかを孫氏が受講者に問いかけ、答えを 自身が解説する形ですすめられる。
このときは、「ITバブルが崩壊した、あなたがリーダーなら、A.ネット関連事業の縮小・撤退、B.さらにネット事業を強化、のどちらを選びますか?」という設問。
孫氏の選択はB、つまり、「さらにネット事業を強化する」というものであった。
孫氏にとって、自ら打ち立てたビジョンで人々を幸せにし、社員・取引先・株主に還元するためにやり抜けねばならない事業、それがネット事業だった。
当時、ITバブルは崩壊し、99%の人はネット株を売った。
もっと下がる、と片っ端から売った。
ソフトバンクの株も約100分の1に下がった。
当然、株主総会でもむちゃくちゃに言われる。
その時、その会場の雰囲気を一変させたのが、ある一人のおばあちゃんの言葉だったという。
今でも「自分を信じてくださった人を裏切らない、お返ししたい」という想いをずっと持ち続けているという。
成功する経営者の共通点として、「強い想いを持ち続ける」というものがある。
そして、その礎となる原体験を持っている人が多い。
孫氏にとっての原体験の一つは、株主総会でのこのおばあちゃんの言葉だったのだろう。
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