佐藤可士和の超整理術/佐藤 可士和
こうして先生の思考を整理しているうちに、あるイメージが浮かび上がってきました。仮説でしたが、先生に躊躇なくぶつけてみました。
「コンセプトとしては、リハビリテーション・リゾートという感じですよね」
先生は膝を打って「そう!」とひと言。うまく言えずにずっとあいまいなまま抱いてきたビジョンが、はっきり言葉になったと、すごく喜んでくれました。
リハビリテーション・リゾート。病院なのにリゾートとは何事だ、と思われる方もいるかもしれませんが、いままでの医療環境に欠けていたのは、まさにこの“リゾート”的な部分ではないでしょうか。この病院は、もちろん身体のリハビリのための施設ですが、気持ちいい空間と真摯なサービスを提供することで、心のリハビリにもなるのです。そして、心のリハビリこそが、身体のリハビリを後押ししてくれると思うのです。
今日、企業から公共・教育機関まで多方面で注目を集めているアートディレクター、佐藤可士和氏。
その佐藤氏が整理術の本を書いた。
アート系の仕事と整理術、一見全く関係がないように思えるのだが、佐藤氏によると、それは間違いだという。
アートディレクターというと、クライアントに関係なく、虚飾のイメージを作り上げるのでは、というイメージがあるがそうではない。
アートディレクターという仕事は、決して自分のなかのインスピレーションをかたちにするわけではない。
クライアントと綿密にコミュニケーションを重ねることで、「これだ」という答えを見つける。
それを的確に表現することで、商品と世の中もスムーズにコミュニケートできるようする。
これがアートディレクションという仕事だという。
たとえるなら、まさに、ドクターと患者という関係。
漠然と問題を抱えつつも、どうしたらいいのかわからなくて訪れるクライアントを問診して、症状の原因と回復に向けての方向性を探り出す。
問題点を明確にし整理し、答えを見つける。
だから、“整理術”なんだと。
SMAP、携帯電話、ユニクロ……佐藤氏の手がけたヒットデザインやアイデアは、思いつきではなく、クライアントの抱える問題に真摯に向き合い、状況を把握し、整理することによって導き出されたもの。
クリエイティブな仕事をするために、整理がいかに大切なものであるかを本書は教えてくれる。
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