心を整える。/長谷部誠
僕は取材などで「長谷部さんは運がいいですね」と言われることがある。「いいですね」と言われれば、「いいです」と答える。確かにそれは事実だけれど、どこかしっくりこない。「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助さんが言うように運というのは、自分が何か行動を起こさないと来ないものだと思っているからだ。(中略)
以前、代理人のロベルト佃さんと運について話したことがある。ロベさんはアルゼンチンのことわざについて教えてくれた。
「スペイン語で運(la suerte)は女性名詞。だから、アルゼンチンの人たちは『運を女性のように口説きなさい』と言うんだ。何も努力しないで振り向いてくれる女性なんていないだろ?それと同じで、運もこちらが必死に口説こうとしないと振り向いてくれないんだ」
異性を口説くのと同じように、運も口説きなさい。ユーモアがあって、堅苦しくなくて、僕はこのアルゼンチンのことわざを一発で好きになった。
長谷部誠はサッカー選手としては、わかりやすい武器があるわけではない。
試合を決定するフリーキックが蹴れるわけではないし、突出したテクニックを持っているわけでもない。
だが、彼はあらゆる指揮官に重宝される日本代表の中心人物だ。
主将として出場した南アフリカワールドカップでの決勝トーナメント進出、アジアカップでの優勝。
彼は一体何を持っているというのか。
それはこの本のタイトルにもなっているように、心を「整える」こと。
実践することはいたってシンプルながら、だからこそ、慌しい現代では意識をしないと難しいもの。
何事も、力を抜いて無理なく自然体で行うことは、意外と難しいものだ。
しかし、自然体で行うといっても、何も努力しないことではない。
むしろ、本書を読むと、長谷部選手が人一倍努力てきたことがよくわかる。
だからこそ、「運というのは、自分が何か行動を起こさないと来ない」ものだと言えるのだろう。
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