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2011年11月 9日 (水)

敗因の研究

4532191041  左ストレートのカウンターを食らい一瞬のうちに勝負がついた。カンバスに長々と伸びたのはチャンピオン柴田だった。
 ハワイのホノルルで行われた世界ボクシング協会(WBA)公認の世界ジュニアライト級タイトルマッチ15回戦。柴田は3月に対戦相手のベン・ビラフロア(フィリピン)に判定で勝った。それから一度防衛したが、わずか7カ月でビラフロアに雪辱されたのだ。
 1回1分56秒のKO劇。あまりのあっけなさに、衛星の実況画面を見つめていたファンのだれもが拍子抜けした。そんな雰囲気のなか、やおら起き上がった柴田は、日本テレビの本田当一郎アナウンサーが差し出したマイクに「日本の皆さん、ごめんなさい」と甲高い声をあげて頭を下げていた。
 茨城県日立市出身のその抑揚のせいもあるが、その声には敗者とは感じさせない明るさがあった。本田は「あの声に(あきれて)日本中が許した」と回想する。こんな選手はいない。負けて申し訳ございませんは、純朴な柴田らしい表現だったが、同時に「すぐカムバックしますから」という気持ちを込めたという。その自信もあった。
 「負けたのには原因がある。この時、60戦近くやってきて一番絶好調だった。そのためにいろんな意味でのすみませんが頭に浮かんだ」と振り返る。とにかく柴田は全国民に責任を感じ、ファンに謝罪しないと気が済まなかったのである。
 「僕は勝った試合は全然参考にならないんです。たまたま勝ったというか。でも負けには全部原因がある。僕はミスの話ができるのがすごくうれしい」。バブルが崩壊したころ「失敗の話」で全国を講演している。経営に失敗した中小企業のおやじさんたちに、勇気を与えるのを使命とした。金銭のためではない。そうしないと一途な柴田の気が済まないのである。
 このハワイでの初回KO負けは、「ボクシング人生最高の財産」になったと柴田は今も懐かしく思い出す。

本書は、多くの敗者について書かれている。

人は勝利より敗北から学ぶことの方が多いものである。

特にボクシングのKO劇は、勝者と敗者のコントラストがはっきりとあらわれる。

勝者は喜びを爆発させ、敗者はマットに沈む。

まさに天国と地獄。

「負けた試合からより多くを学ぶことができる」と言うには、あまりにも敗者にとっては残酷な瞬間である。

このまま二度と立ち直れずリングから去ってしまう選手も多くいるのではと想像してしまう。

ところが、かつて2階級に渡って3度世界王座を奪取したうち柴田国明は「負けには全部原因がある。僕はミスの話ができるのがすごくうれしい」と語る。

特に、ベン・ビラフロアに1ラウンドKO負けした試合は、私も生中継で試合を観ていて、すごく印象に残っている。

あまりにも呆気なく試合が終わってしまい、立ち上がった柴田選手が「日本の皆さん、ごめんなさい」と甲高い声をあげて頭を下げたシーンが今でも脳裏に焼きついている。

しかし、その後、柴田は再度世界王座に挑み、見事王座に返り咲く。

初回KO負けは、「ボクシング人生最高の財産」になったというのが単なる柴田の強がりでなかったことを実績で示している。

「敗北から学ぶ」、これは言葉で言うほど簡単なことではない。

それだけに、これを本当に実践できる人は、価値ある人生を送ることができるのではないだろうか。

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