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2011年11月16日 (水)

ビジネスの“常識”を疑え!/遠藤功

4569690823  フラット化はいいことずくめなのかといえば、必ずしもそんなことはない。フラットな組織ゆえの弊害だってあるのだ。
 まず、組織の縦系列が弱いフラットな組織では、部下の面倒をみながら人を育てるということがきわめて難しくなる。それから、階層的組織に比べひとりの人、ひとつの部署が管理する範囲が広がるので、隅々まで目がゆき届きにくくなって不祥事が発生したりしやすい。
 これらの長所と短所を考え合わせると、少なくとも技能やノウハウの伝承、それに人を育てることが重要なモノづくりの現場には、従来の階層型組織のほうが向いているといえる。
 トヨタは昔から、部長の下にひとつのユニットとして課長、係長、担当者を置き、課長が係長を次の課長に、係長が担当者を次の係長に、という具合にそれぞれ自らが責任をもって育て上げるというのが不文律になっていた。
 ところが、ここにきて海外展開が加速化し、人材を海外に送り出す必要性が増したため、階層の中抜けが起こりはじめている。課長―係長―担当者という縦系列が維持できなくなり、過去のようなきめ細かい人づくりができなくなりつつあるといわれている。こうしたことが近い将来、現場の品質の劣化につながるのではないかと危惧されているのだ。
 トヨタの場合、意図的にフラット化しようとしたわけではないのだが、人材不足が結果的に一部の組織の階層を間引いてしまったというわけだ。
 フラットな組織のほうが若手にも責任と権限を与えるので、人が育つスピードが速いとよくいわれるが、技術や技能を伝承する現場では、時間をかけたきめ細かい指導を疎かにしたら人は育たない。

経営にスピード感が求められるようになって、組織のフラット化の必要性が叫ばれている。

ピラミッド型の階層的組織は、情報伝達や意思決定に時間がかかりすぎる。

迅速で柔軟な企業運営には、できるだけ階層の少ない文鎮型のフラットな組織のほうが望ましい。

これが、現在の組織論における一般的な常識。

たしかに組織がフラットになれば、経営トップと現場の間にバイアスがかからず情報のやり取りができ、意思決定はスピードアップする。

企業が以前に比べ格段に変化の激しい環境に置かれていることを考えれば、すばやい意思決定、すばやい伝達ができることが経営にとって有利に働くのは間違いない。

ところが、組織をフラット化すれば全てうまくいくのかといえば、企業によってはマイナスに働くことがある。

そのよい例がトヨタ。

昨年、トヨタは国内外でブレーキやアクセル関連の不具合が指摘され、米国でのリコール問題に発展した。

豊田章男社長は、トヨタ車の安全性問題で生じた事故に関して「まことに残念(deeply sorry)」と述べて謝罪するとともに、「人や組織が成長するスピードを越えた成長を追い求めてきたことは真摯に反省すべき」と述べた。 

人を育てるスピードが会社の成長するスピードに追いつかなかったことが原因だと述べた。

要するに、トヨタのように人材能力が競争力の源泉となっているような会社においては、フラット化は必ずしもベストな選択ではないのである。

今の時代、世間一般で述べられていることを鵜呑みにして、自社に取り入れればうまくいくとは限らない。

本書が書かれたの2007年。

トヨタの米国リコール問題が起こる3年前に書かれている。

そして本書が書かれた3年後に、懸念していたことが現実のものとなってしまったとは、なんとも皮肉なことではなかろうか。

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