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2011年11月 5日 (土)

職場は感情で変わる/高橋克徳

4062880164_2  社会心理学者の山岸俊男先生は、「安心」と「信頼」を明確に区別しています。安心とは、相手の損得勘定に基づく相手の行動に対する期待です。逆に信頼とは、相手の人格や行動傾向の評価に基づく、相手の意図に対する期待であると述べています。
 相互監視がなされ、集団のルールが明確であり、そのルールを犯すことは損であるという心理が働くからこそ、相手は予測通りの行動をとる。こうした状態であれば、安心できます。自分が損しないようにと合理的に考えさえすれば、社会的不確実性は存在しない。必ず予測通りの行動をしてくれるという期待が、安心だということです。
 逆に信頼は、社会的不確実性が高くても、相手が期待通りの行動をしてくれるだろうと、相手の意図を信じることです。
 長期的関係がベースにあり、集団主義のもと逸脱行為を許さないかつての日本的経営の中では、人は周囲の意図に反した行動をするとはじかれてしまうのではないかと思い、自分の行動を抑制していました。協力という行為も、ある意味、そうしなければ自分が損をするのだから、自分から協力することが当たり前だと思えたわけです。
 それが、短期的関係を前提にした途端、それぞれが自分の利得のために行動を起こし始めた。だから、相手の行動が予測できない。今まで常識だと思ってきたことが通じない。それが不信感を生む。こんな構造に陥っているのが、今の日本企業であり、日本社会です。

本書はベストセラー『不機嫌な職場』の解決編という位置づけ。

「感情の連鎖」に注目することから良い職場・組織づくりは始まると説いている。

特にここで述べているのは、「安心」と「信頼」について。

「安心」と「信頼」、よく似た言葉だが、社会心理学者の山岸俊男氏によると、明確に区別されるとのこと。

そして、今、「安心」をベースにした人間関係や組織作りが崩壊してきているという。

安心感を持たせるには、周囲が思い通りの行動をするような明確なルールが必要である。

そうした行動をとらなければ損をするという状況をつくり出さなければならない。

自分から周囲に協力しない人は評価を下げ、給与を下げる。

あるいは、周囲に悪影響を及ぼすような行為をしたら、組織から出て行ってもらうといったルールである。

確かにこうしたルールは、誤った行為をさせない、組織の中での不確実性を排除する仕掛けとして、機能する。

それがあると、組織に属する人間は安心して働くことができる。

ただ、そのような組織は終身雇用という前提のもと、成り立っていた。

しかし、ルールに縛られ、その通り行動しなければならないような集団主義的組織は、そこで働く人たちを本当に幸せにするのだろうか。

今、日本的経営が崩れてきていると言われているが、考えてみれば、これは必ずしも悪いことばかりでない。

それによって、個が集団に埋没して、自分の意思を外に伝えることができないという状況が変わってきた。

個々人が自分の意思を伝えられる、自分の意思で行動を起こせるようになってきた。

だからこそ、個性という輝きを手に入れる人たちも増えてきたと言える。

だとすると、職場で求める安心感は、ルールに従わなければ損をするという状況に支えられた確実性の確保ではなく、人格を持った個々人が自らの意思でお互いを思いやり、お互いを守ろうという気持ちに支えられたものへと進化していかなければならない。

正確にはこれは安心ではなく、信頼である。

つまり、「安心」から「信頼」へと人間関係や組織作りの軸が変わってきていると言えるのではないだろうか。

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