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2011年11月14日 (月)

まじめの罠/勝間和代

 「ま4334036465じめの罠」というのは私の造語ですが、これは、何かに対して、まじめに、まじめに努力した結果、自分を、あるいは社会を悪い方向に導いてしまうリスクのことを指します。
 極端ですが、わかりやすい例を挙げましょう。人類の歴史上、これまで最もまじめで、かつ、まじめの罠にハマってしまった最悪の人は、ナチス・ドイツの総統、アドルフ・ヒトラーの部下だったアドルフ・アイヒマンでしょう。彼はナチス親衛隊のゲシュタポ・ユダヤ人課課長として、まじめに、そして忠実にユダヤ人の組織的虐殺の歯車としての業務を遂行しました。その結果、約600万人ものユダヤ人を死に追いやったのです。
 第二次世界大戦終結後、アイヒマンに対する裁判が行われます。どんな悪人面をした人物が現れるのかと固唾を吞んで見守っていた傍聴人は、アイヒマンの姿を見て驚きます。彼はいわゆる「まじめな小役人」のような人物でした。「自分は上の命令に従っただけ。自分には責任はない」と語ったアイヒマンに対する興味から、アメリカの心理学者、スタンレー・ミルグラムが行った「ミルグラム実験」(アイヒマン実験とも呼ばれる)という有名な実験があります。
 詳しくは『服従の心理』(スタンレー・ミルグラム著、山形浩生訳、河出書房新社、2008年)に書かれていますが、この実験は、白衣を着込んだ「権威者」(実験者)が、隣室にいる見ず知らずの他人に「苦痛をともなう電気ショック」を与えるように被験者たちに指示して、どのような反応があるのかを調べるものでした。
 常識的には、たとえ実験とはいえ、200ボルト以上のショックを他人に与えるのはためらう人が多いと考えるでしょう。ところが、被験者の約6割もの人が、最大で450ボルトのショックを他人に与え続けたというのです。すなわち、この実験は権威者の指示に容易に従ってしまう人間の心理を表したものでもあります。
 私たちの身のまわりには、職場で与えられる目標の他に、あふれ返るほどの法律、または法律にまではなっていなくとも、さまざまな守るべき規則があります。そして、こうした目標や規則に、素直に、そしてまじめに従ってばかりいると、下手をすればいつのまにかアイヒマンと化してしまうのです。したがって、私たちは、いつでも、どこでも、「まじめの罠」にハマってしまう可能性があるということをまずは覚えておいてください。

「まじめにコツコツと」、これは日本人の専売特許のようなものだ。

高度成長期は、この日本人の特性がうまく機能していた。

なぜなら、市場は拡大するばかり、社員は上から言われたことをただまじめに従っていれば、給料は右肩上がり、

そして、よほど悪いことをしない限り、定年まで同じ会社で勤めあげ、定年を迎えたら、ちゃんと退職金と年金がもらえた。

今、このような職業生活は、夢のまた夢、あり得ないこと。

いまだにこのような夢を見ている人は公務員以外はいないだろう。

今は、「まじめにコツコツと」が仇になる時代。

ITの登場によって、あっと言う間に勝者が敗者になってしまう。

既成のものがどんどん破壊されていく。

このような時代、いい意味でのしたたかさが必要になってくる。

日本人としての良いものは残しつつ、新しいものをどんどん取り入れていくしたたかさが求められている。

本書では官僚、日銀、検察がその「まじめの罠」にはまっている代表格として記されていたが、実際、全ての人がそのような罠にはまる可能性があると思わされた。

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