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2011年11月18日 (金)

挫折力/冨山和彦

C__docume1__locals1_temp_znp70  日本の優等生の特色は、試験でまんべんなく高得点を取るところにもある。百点中、全課目で七、八十点を取れることが大事で、一科目だけが百点でも、残りの科目が平均レベルでは優等生になれない。すべての科目に通じた優等生といえば格好いいかもしれないが、これまた自己抑制の産物である。現実には、すべての教科がまんべんなく好きという人は、まずいない。嫌いな教科も我慢して勉強しなければ、平均点は上がらない。つまり好き嫌いを抑制する能力も、優等生の条件なのだ。(中略)
 そう考えたとき、全部「優」の人は、決して「優秀な人」とはいえないことがわかるだろう。あらゆることをまんべんなく、ほどほどにこなせるというだけなのだ。そして自分の心に正直に「この学科はくだらない」と表明することよりも、すべての学科の先生にいい顔をすることを優先するタイプだということを意味している。

今の日本で何が起こっているのか。

それはある意味、逆転現象と言われるもの。

つまり、これまで優秀とされていた人が、実はもっとも役に立たない人間になってしまう。

これまで組織の中で全く評価されなかった人が、会社を辞めて事業をはじめ大成功をおさめたりする。

どうしてこんなことが起こるのか。

それは、ひとつに学校のシステムにも問題がある。

日本の学校でいい成績をとるにはどうすればいいのか。

それには苦手科目を失くすこと。

くだらない授業だと思っていてもひたすら我慢してまじめに勉強する。

自分の興味のあることにのめり込むと、他の勉強をする時間が奪われてしまうので、いい点数が取れなくなってしまう。

だから、自分を押さえ込むことが必要。

学ぶ姿勢としては、ある意味で謙虚さが必要であり、そういう姿は日本人的には美しいかもしれない。

だが悪くいえば相手に合わせるために、自分を押さえ込んでいる。

これは答えのない問題を考えたり、あるいは問題設定さえ自分で行い、自分なりの答えを創造していく際には、マイナスに働くことが多い。

人生や企業経営における本当に大事で難しい問題には正解がない。

だから最後は、自分自身の価値観、もっとわかりやすくいえば「好き嫌い」で判断するしかない。

自分の頭で考え、自分の心で感じることが基本なのである。

つまり、本当の意味での自分で考える能力は、日本的教育システムでは育成できない。

今の日本の教育システムでは、好き嫌いを抑制してでも全科目で模範答案に近い答えを書き、いい得点を得ようとする優等生を量産するばかりである。

それは、平時にはよかったかもしれないが、今はそんな時代ではない。

試験で問われる以外のさまざまな能力が、人生を生きていくうえで要求されているのだ。

現在の政権与党である民主党政権には高学歴の政治家が多い。

ところが現実の問題に対時したときに、彼らの多くはおろおろするばかり。

普天間にしても、消費税にしても、最近話題のTPPにしても、いろいろな人たちにあれこれいわれ、皆にいい顔をして全科目合格点を取ろうとして、結局、優柔不断を繰り返す。

あげくに全員が不幸になる惨めな結果が待っている。

今の日本の閉塞感は、優等生がそのままトップに立つ社会の仕組みが作り上げているといっても良いのではないだろうか。

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