日本一勝ち続けた男の勝利哲学/加藤廣志
常に全国レベルの戦いをしているわけですから、能代工の練習は大変にハードなものがあります。たとえ練習がきつくても、レギュラークラスはついてこられるのです。彼らには、自分の力で試合に勝つという明確な目標があるからです。
しかし、目標を失いがちな控えの選手にいかに目標を持たせるか。私は次のことを実践しました。
彼らにもそれぞれ仕事を与えてやるのです。たとえばデータの処理。彼らの上げてきたデータを基にして、練習をやるのです。
データにはシュートの回数はもちろん、パスミスの回数など細々とした、いろいろな項目があります。そういったものをさっとつけるのが得意な生徒がいるのです。生徒たちの得意な部分を引き出して、役割を与える。そうすると自分もチームの一員として貢献しているから、やる気も俄然違ってくるのです。実はそのことが非常に大事だと思います。
なぜならそれをするためには、日頃から生徒と接して、観察していなければなりません。どの生徒はどういったことが得意か。それを知らなければ役割を与えることもできないのです。
能代工業高校のバスケットボール部監督在任中の三十年間でインターハイ七連覇を含む計三十三回の全国制覇を達成した加藤氏。
これだけ勝ち続けるには、選手を育てることが必要になる。
バスケットは一度に五人しか試合に出られないスポーツ。
どうしても試合に出られない選手が多くなる。
しかし、控えの選手が優秀でなければ、決してチームは強くなれない。
レギュラーだけでなく、控えも含めた、まったく試合にでれない選手まで、幅広く育成する必要がある。
ただ、試合にでれない選手のモチベーションを高めるのは簡単ではない。
そのことについて加藤氏は、「生徒たちの得意な部分を引き出して、役割を与える。そうすると自分もチームの一員として貢献しているから、やる気も俄然違ってくる」と言っている。
つまり、普段から選手を観察し、個々の選手にあった役割を与えることがポイントだということ。
人は自分のやっていることが組織にとってどんな意味があるのかを考えるもの。
そして、それがはっきりとわからないとやる気をなくす。
やる気とは、組織に対する自分の貢献が明確になったときに出てくる。
だとしたら、組織のリーダーは、その構成員に対して、個々の特性にあった役割を与え、その意味をしっかりと伝える必要がある。
これはバスケのチームだけでなく、あらゆる組織に共通して言えることではなかろうか。
« 乱世の帝王学/山本七平 | トップページ | 原発・正力・CIA/有馬哲夫 »
コメント