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2011年12月22日 (木)

勝者の代償/ロバート・B・ライシュ

_b   技術革新の中核には、才能と世の中を見通す力という、異なる方向性を持った二つの明確な個性がある。第一は、アーティストや発明者、デザイナー、エンジニア、金融のエキスパート、変人、科学者、作家またはミュージシャンたちの個性であり、要するに彼らは、ある特定の媒体において新しい可能性を見つける能力を持ち、そしてその可能性を深め、発展させることを喜びとするような人たちである。媒体は、コンピュータ・ソフトウェアや金融の場合といった、非常に技術的なものかもしれないし、また芸術のように、よりうつろいやすいものかもしれない。この第一の個性を持った人というのは、媒体を引き伸ばせるだけ拡大し、その限界を検証して、その中の新しい問題を発見してそれを解くことに喜びを見出すような人だ。私はこういう人を「変人」と呼ぶ。(中略)
  商業的な技術革新の源泉として変人は必要であるが、彼らだけでは十分ではない。第二の個性もまた不可欠である。それは、営業担当者、タレントエージェント、需要開拓者、流行観察者、プロデューサー、コンサルタント、敏腕家など、つまり他の人々が何を欲しいか、何を見たいか、何を経験したいかについての市場の可能性を知ることができ、そういった機会をどのように生み出すかを理解している人の個性である。
  この第二の個性を持つタイプの人は芸術家、発明者といった変人に劣らず創造的であるが、その創造性の種類が異なる。特定の媒体において目新しさを追求して、従来の枠をはみ出すことに喜びを見出すというよりは、人々の潜在的な欲求と隠れた願望、すなわち当の本人でさえ十分に気づいていない欲求や、まだ存在しない製品に対する願望などを見つけ出すというところに独創性を持つのである。(中略)
  多くの点で、この第二の個性を持つタイプの人は、カウンセラーや精神分析医にさえ似ているけれども、けっして彼らと同じような技能や動機を持っているようなそぶりは見せない。しかし人々が何を欲しがり、何を求めているのかを引き出し、直感するというカウンセラーや精神分析医の能力のある部分を確かに共有しているといえるのである。他に適切な言葉が思い当たらないし、またこの仕事の対人的な性質と、それが従来の販売や営業の役割とは違うということを強調することが大切なので、この二番目の人を「精神分析家」と呼ぼうと思う。

著者のライシュ氏は、クリントン政権時に労働長官を務めていた人で、今世の中にどんなことが起きているのかを俯瞰し、さらに将来どんなことが起こるのかという未来予想を本書でしている。

ここでライシュ氏は、技術革新について述べているが、その中核には二つの異なる方向性を持った個性が必要だという。

一つは「変人」であり、もう一つは「精神分析家」。

「変人」と「精神分析家」、いずれもいわゆる常識人ではない。

しかし、言われてみれば、たとえば先日他界したスティーブ・ジョブズ氏にしても、ある意味、「変人」的な面を持っている。

常識人には、あのような世の中を変えてしまうような革新的なものは生み出せなかっただろう。

そしてその「変人」が活躍できるような場を提供できる風土がアメリカにはあったということも見逃せないポイントである。

「変人」であれ「精神分析家」であれ、大事なことは、そのような常識外の人材が活躍できる場を提供できるかどうかということ。

では今の日本はどうだろうか。

日本はどちらかというと、他と合わせ同化することが求められる社会である。

そして同化しないものは排除される。

しかし、これからの時代、ますます技術革新が求められていく中で、「変人」や「精神分析家」が活躍できる場を提供できるような、より懐の深い受容度の高い社会を構築していく必要があるのではないかと考えさせられた。

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