« 深夜特急6―南ヨーロッパ・ロンドン― /沢木耕太郎 | トップページ | 近代化と世間/阿部謹也 »

2011年12月 8日 (木)

イノベーションの作法/野中郁次郎、勝見明

51bhv8mtv9l__sl500_aa300_   数々のイノベーションが生まれるプロセスには、主観的観点と客観的観点をスパイラルに回していくイノベーターたちのバランス感覚がある。
  大リーガーのイチロー選手が好成績を上げることができるのも、主観と客観の二重の観点を常に回しているからである。イチロー選手はまず、自分は打者としてこう打ちたいという理想のフォームや身体の動きを常にイメージする。これは主観的観点から見た打ち方で、暗黙知の世界である。その一方で、「もう一人の自分」が自分自身を客観視し、理想のフォームと実際の動きとの違いを分析し、言語化(形式知化)してフィードバックしていく。例えば、イチロー選手はときにスランプに陥る理由について、あるインタビューにこう答えている。
「ボールは見て打つのではなく、体で感じて打つものです。ところが、不調になると余計なボールにも体が動いてしまう。余計なボールは打ちたくないので、今度はボールを見ようとしてしまう。見ようとするとその分、体が遅れ、いっそう打てなくなってしまうのです」こうして不調の原因を分析し、もう一度、暗黙知として体化されている理想の動きを取り戻していく。暗黙知と形式知、その両方のバランスが絶妙にとれているところに、イチロー選手の強みがある。
  ところが、今の日本企業には、分析マヒ症候群が蔓延し、このバランス感覚が失われつつある。それは90年代以降、日本経済が低迷する中で、アメリカ型の分析的経営が日本にどんどん入り込んできたことと無縁ではない。論理的思考(ロジカルシンキング)が万能視されるここ数年の傾向もその表れだろう。

本書は、イノベーションが生まれるさまざまな事例を紹介しながら、イノベーションの本質に迫ろうとしている。

今、多くの企業が、自社に必要なのはイノベーションであると言っている。

では、イノベーションはどのようなリーダーのもと、どのようなプロセスで生まれるのか?

その根本には「主観的観点と客観的観点をスパイラルに回していくイノベーターたちのバランス感覚」があると著者は言う。

その一例として、ここではイチローの例をあげて説明している。

つまり、主観でみる部分と冷徹に自分を客観視する部分がバランスよく混在し回っている。

一方は暗黙知の世界であり、もう一方は形式知の世界。

この二つを行ったり来たりする、そこからイノベーションが生まれるという。

そして、今の日本企業は分析マヒ症候群が蔓延し、バランス感覚が失われつつあるという。

たしかに、書店にいけば、ビジネス書コーナーにはロジカルシンキング、マーケティング、戦略論の本が所狭しと並べられている。

これらは、経営を客観的、合理的にとらえようとしている本である。

しかし、一方、経営とはリーダーの「こんなことをやりたい」「こうあるべきだ」という熱い思いによって成り立っている部分がある。

大事なことは、この二つをバランスよく取り入れることであろう。

« 深夜特急6―南ヨーロッパ・ロンドン― /沢木耕太郎 | トップページ | 近代化と世間/阿部謹也 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: イノベーションの作法/野中郁次郎、勝見明:

« 深夜特急6―南ヨーロッパ・ロンドン― /沢木耕太郎 | トップページ | 近代化と世間/阿部謹也 »