衆愚の時代/楡周平
思い出すのは、わたしが三十歳頃のことでしたか、毎月集金にやってくる新聞奨学生のことです。元気もいいし、礼儀正しい好青年で、購読料を払う短い時間の中で、たわいもない会話を交わすようになったのですが、ある時「これで、伺うのは最後になります」と言い、希望叶って某有名企業に就職することを告げられたのです。海外に駐在して働くことが夢だったらしく、目を輝かせながら入社後の抱負を語る若者の姿を見ていると、思わず「おめでとう。がんばったね」という言葉が口をついて出ましたつけ。
いざ会社に入ってしまえば、思い通りに行かぬことも多々あるに決まってます。辛い思いもすることでしょう。だけど、彼には学友たちが楽しい学生生活を送っている四年間、辛い思いに耐え、雑念に打ち勝ったという実績がある。社会人生活を始めるに当たっての基礎なんてものは、充分過ぎるくらいにできている。
どの世界においても、求められる人材とは、こういう人間なんじゃないでしょうか。
毎年、様々な調査機関が企業が新入社員に求める人材像を発表している。
最近だと、「コミュニケーション能力のある人材」「リーダーシップのある人材」「チャレンジ精神のある人材」等を求める傾向が強い。
しかしその結果を裏読みすると、それだけ求める人材が不足しているということ。
つまり、大学を卒業してある程度の知識を持っていても、使えない人材があまりにも多いという事の裏返し。
もはや、安定した職業なんて存在しない。
日本の産業は益々空洞化していくことだろう。
どんな仕事でも、能力と結果を厳しく問われる時代が来ている。
そのような中で職にありつくのは本当に厳しくなってくる。
それだけに、学生生活で何を身につけるかは重要な課題になってくるであろう。
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