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2012年1月 9日 (月)

わが経営に定石なし〈徳増須磨夫追想録〉

Znp19   こうして何年かが経過し、「イノベーション」という言葉を打ち出しても良さそうな環境が整った。1985年頃のことである。徳増は「イノベーティブな雰囲気を創り上げよう」ということを全社員に呼びかけた。「イノベーションが必要だ。イノベーションの気風をみなぎらせよう」という徳増の言葉は、徳増自身が「イノベーション」というカタカナの横文字を使うことを心配した割には、社内に受け入れられた。特に、若い層にはすんなりと受け入れられた。
  「活力ある」、「魅力ある」、「信頼される」の三つをチームカラーとして掲げて、BIG3への道を切り開こうと先頭に立って旗を振る徳増の行動に、いつしか住友海上の社員は「知恵と行動力を武器とする攻めの住友海上」を目指す戦闘集団に生まれ変わりつつあった。(中略)
  こうした中での仕上げの改革は、86年12月に人事考課に加点主義を導入したことである。
  前向きな思考をさらに進めるために、当時の小野田隆・常務取締役人事部長(その後、徳増の後任の社長に就任)が徳増の考えを汲み取って、考課制度の改革を進めた。減点主義から加点主義への転換である。
「チャレンジすれば50点、チャレンジして成果を上げれば100点、いずれもしなければ零点」
  というようなキャッチフレーズを作り、全社員に積極的にチャレンジすることを求めた。

徳増氏が住友海上の社長になった当時の住友海上は業界では5番目の会社であった。

そうした中で徳増氏は、何としても2社を抜き去り3番日の地位を占めること、業界でBIG3になることを目標にし、全社員に号令を掛ける。

当時の住友海上の社員像は、優秀でおっとり型、大きな老舗の坊ちゃんという感じであった。

優等生タイプで知性派ではあるが、モーレツ社員でもファイターでもない。

とりわけ柔軟性への評価が低くなっているとの評価だった。

競争に打ち勝ち、BIG3を目指していくためには、もっと積極性や気迫に満ちた会社にすべきだ。

「競争ばかりがすべてでない」と言っているうちに、いつしか社内の気風が現状維持に傾いていた。

業界の地位はジリ貧になっていた。

住友海上の企業イメージは、時代の大きなうねりの中で、社外から、また社内でもイメージチェンジの必要に迫られていた。

徳増氏はこうした住友海上に根付いた風土を変えるために「イノベーション」運動を起こす。

ここでいうイノベーションとは、「新しいものに取り組む」、「チャレンジする」という社員の意識改革のことである。

徳増氏は社内で「イノベーション」を声高に叫び、先頭に立って、プラス思考の考え方を繰り返し説いたり、ムードづくりをすることに努めた。

そしてその総仕上げとして手を付けたのが、人事考課制度の改革であった。

人事考課は単に社員の給与や賞与を決めるための行事ではない。

最も重要な機能は、「人事考課制度はメッセージである」ということ。

例えば「失敗を恐れずチャレンジする人材を評価する」人事考課制度を作れば、社員には強烈なメッセージとして伝わる。

何しろ、「チャレンジしない社員は給料が上がらない」ということになると、社員はそのことに対して無関心ではいられなくなる。

徳増氏のやってきたことは、会社を変えようとしている人にとっては、大いに参考になる事例である。

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