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2012年1月12日 (木)

司令官たち/ボブ・ウッドワード

Znp16   午前十時半、ブッシュは執務室で内輪の会議を開いた。クエール、ベーカー、チェイニー、スコウクロフト、パウエル、スヌヌ、ゲーツが出席した。ブッシュはトップシークレットの国家安全保障指令(NSD)の二ページの草稿を前に広げた。
草稿は二つの条件をふくむように修正されていた。砂漠の嵐作戦の実行は次の条件で認可される。
(一)最終的に外交的な突破口が開けなかったとき。
(二)議会に適正に通告が行なわれたとき。
  その文書は基本的に、期限が来たらすみやかに攻撃を開始するという政府の主張をならべたものだった。そこには、イラクをクウェートから撤退させるのがアメリカ合衆国の方針であると書かれていた。以下ーー外交手段経済制裁、十以上もの国連決議をふくむ、イラクに撤退を促すためのあらゆる平和的解決は失敗した。イラクはクウェートの戦域に増強部隊を移動させ、占領下のクウェートの防御を強化しているから、ここで手をこまねいていればアメリカの国益を害することになりかねない。イラクはクウェートの略奪を継続し、国民に虐待行為を働いている。
  イラク軍は、アメリカ軍ならびに多国籍軍を防衛する意味でも攻撃されなければならない。同時に、イラクの一般市民の死傷者ならびに損害は、味方の部隊の保護と矛盾しないかぎり最低限に抑えるべきであり、イスラムの聖地も保護されなければならないと指示されていた。
  大統領はその文書にサインした。NSDには意図的に日付が入れられていなかった。日時は二つの条件が満たされた時点で入ることになっていた。
  ブッシュは、チェイニーが公式の執行命令にサインして、その日のうちにシュワルツコフにそれを送り出すことを承認した

この後、アメリカは湾岸戦争に突入する。

本書はボブ・ウッドワードによる湾岸戦争開戦にいたる意思決定プロセスを追った作品。

ウッドワードといえば、カール・バーンスタイン記者とともに、ウォーターゲート事件における卓越した調査を本にした「大統領の陰謀」があまりにも有名。

本書ではイラクのクウェート侵攻からイラク攻撃開始までのことがリアルに描かれており、興味深い。

特にイラクのクウェート進行が明らかになってから開戦までの国家中枢でのやり取りは本当に緊迫感が伝わってくる。

開戦までの意思決定にはいろんな立場の人々の思惑もからみ、様々な角度からの議論がなされている。

やはり戦争をするということは、それだけの議論を重ねる必要があるのだろう。

そしてよくこれだけの克明な取材ができたものだと改めて感服させられた。

アメリカという国は危うい面を抱えている国だが、それでも何とか持ちこたえているのは、健全なジャーナリズムが生きているからだろう。

それにしても、湾岸戦争の時代は、様々な思惑が絡んでいたとは言え、大義らしきものがあった。

ただ9.11の後は、大義のない、まやかしの戦争が増えてきたような気がする。

どこかでまた、揺り戻しがくるのではないだろうか。

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