借金バンザイ!/小堺桂悦郎
「月商の三カ月分の預金残高のある方は眠っててもいいです。でも一カ月分もあるかないかの人は、ちゃんと私の話を聞いてくださいね」
これは、あるセミナーのオープニングでの私の話である。
私が主演講師ではないセミナーだった。私は何人かの講師の中の一人。
私の講演のテーマは「借金のドロ沼」。
100人くらいいた会場のほとんどの人は、「ああ・・・自分には関係ないや」と思っているような感じ。
ところが、冒頭のひと言をしゃべったとたん、会場の空気がビーンとした。
「月商の一カ月分の預金だって?何言ってんだ?」
そんな感じだ。
だって、もし月商が1億円なら、預金残高1億円って話。
そんな会社は、なかなかないでしょうね。
月商の一カ月分の預金残高もない人は・・・って言われたら、そりゃ目の色も変わるってもん。
じゃあ、月末の預金残高が一カ月分ないってことの意味は?それは、翌月の支払いが、翌月の売り上げが入ってこないと支払いできないってこと。
どうもピンとこない?
ん・・・・質問を変えましょう。
来月一カ月、もし売り上げが一切なかったら、支払いできますか?売り掛けの入金がもしなかったら、それでも家賃やらなにやら払えますか?
無理?
そう・・・入ってくるお金を待って、支払いをする・・・そうなんです。
月末に月商一カ月分の預金がなければ、自転車操業なんですよ。それが自転車操業の一歩目。
小堺氏はここで自転車操業とはどういうものかということをいっている。
例えば月商1億円の会社であっても、月末預金残高が3000万円ということはよくある話。
月末預金残高が月商の3ヶ月分ある会社なんて、中小企業の場合、ほぼゼロに等しい。
これは翌月の売り上げの入金を待たないと支払えないということ。
もし翌月の売り上げがゼロだったら、即倒産ということになる。
そうすると、かなりの会社が自転車操業だと言える。
そして多くの会社が、このような危うい経営基盤のうえに立って営業している。
このことはしっかりと認識しておくべきだろう。
そしてこのお金の流れを止めないために銀行がある。
ところが小堺氏によると、多くの経営者は借金の仕方を知らないという。
だから商工ローンとか、金利の高いところからお金を借りてしまう。
結果、ますます泥沼化してしまう。
本書は、元銀行マンが、融資をする立場から、どのように銀行と付き合ってゆけばよいのかを具体的に述べている。
それにしても、決して倒れることなく、うまく自転車を乗りこなせねばならない経営者は大変だ。
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