間違いだらけの経済政策/榊原英資
そこで重要になるのが原子力です。原子力発電の量を大きく増加することが求められます。
日本の原子力にかかわる技術は世界のトップ水準。その安全性も多くの他の国に勝ります。
チェルノブイリやスリーマイルズといった大きな事故は起こっていませんし、問題になった柏崎原発でも原子力本体の事故ではありません。周辺機器の火災が起こったというだけであれほどマスメディアが騒いだというのが不思議な気がします。
もちろん、原子力発電所で本格的な事故が起これば影響は甚大ですから、安全性に万全を期することは必要ですが、日本のマスメディア、特にテレビは騒ぎすぎの感があります。
原子力発電なしで充分な電力が供給できるならともかく、現状では化石燃料による発電に代わるものは原子力発電しかありません。マイナス成長でもいいと言うならともかく、そこそこの成長を望むなら、原子力発電に頼るしかありません。
本書は2008年11月に出版されたもの。
今、著者の、この主張を読むと「何を寝ぼけたことを」と思ってしまうのだが、本書が出版された当時は、このような意見が大半だった。
「原子力は安全」「日本はもっと積極的に原子力を売り込むべし」ということを多くの識者が主張していた。
電力会社もテレビのCMなどで原発の安全をしきりに訴えていた。
ところが、これが3.11以降激変してしまった。
今、原発の推進を積極的に語る識者は本当に少ない。
また「日本の原子力は安全」などとおおっぴらに言える空気でもない。
でも、ここは発想を変えて、プラスに受け止めるべきだろう。
もし、3.11が起こらず、あのまま日本が積極的に原発を推進していったらどうなったか?
恐らく、時間の問題で、いつかは事故が起こっただろう。
3.11よりもっと甚大な被害をもたらす事故かもしれない。
もしかしたら、日本以外の国で、日本の作った原発が事故を起こすかもしれない。
そうなってしまったら、日本の信用は一気に失墜する。
日本バッシングが始まる。
悲劇的なシナリオが予想される。
そう考えると、3.11は、日本にとってよかったのかもしれない。
それによって、原発政策の大幅な方向転換を迫られたのだから。
もちろん、それによって直接被害を被った方々は、本当に大変だったと思うのだが。
もし、あのまま、原発を推進していったら、日本は、そして世界はどうなったのだろう。
そう思うと、こちらの方がよほど怖い。
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