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2012年2月 3日 (金)

人はなぜ逃げおくれるのか/広瀬弘忠

Znp14  社会一般の常識と専門家の知識とが、まったく相反していることは、世のなかにけっして少なくない。災害や事故についても同じである。マスコミ情報も含めてのことだが、社会常識は、古い災害観に根ざしたものである。ところが、専門家の知識は日々の研究・調査によって変化していくため、社会常識と専門家の知識とが、時に大きく背馳してしまうのである。たとえば、その一例としてパニックについて取りあげてみよう。
  まず読者への質問である。次の①と②のうち、どちらが正しいだろうか。
  ①地震や火事に巻きこまれると、多くの人びとはパニックになる。
  ②地震や火事に巻きこまれても、多くの人びとはパニックにならない。
  答は②である。
  災害や事故に出合って、平常心でいることは難しい。恐れや不安を感じるのは、ごくあたりまえのことだろう。ただそれが、直ちに大勢の人びとが先を争って、お互いがお互いの進路を邪魔する敵のように、互いに踏みつけたり、押しつぶしたりして死傷者を生じるパニックが起こることにはつながらない。つまり、異常行動としてのパニックは、多くの災害や事故ではあまり起こらないのである。パニックはまれだ、というのが専門家の「常識」なのである。

ひと頃、パニック映画が流行った時期があった。

大地震、超高層ビルの火災、豪華客船の転覆、等々・・・

これらの事故や災害に巻き込まれた人々は、映画では一様にパニックに陥る。

平常心を失い、逃げまどい、人渦の中で老人や子供は踏みつけにされる。

そのため、災害や事故に巻き込まれると、多くの人はパニックに陥るものと思っていた。

しかし、これは間違い。

パニックはまれだ、というのが専門家の「常識」なのだという。

これは意外だった。

そういえば、去年の大地震でも、人々がパニックになったという報道はなかったように記憶している。

むしろ、逃げ後れてしまった人々についての報道がほとんどだったのではないだろうか。

本書によると、現代人は、仮に危険に直面しても、それを感知する能力が劣っているという。

台風や洪水、津波などの災害時に、避難勧告や避難指示がだされた場合でも、これに従う人々は驚くほど少ない。

災害の被害をさけるために避難の指示や命令などが発令されても、避難する人びとの割合が50パーセントを超えることは、ほとんどない。

安全に慣れてしまって、危険を実感できないでいるのである。

私たちの心は、予期せぬ異常や危険に対して、ある程度、鈍感にできているのだ。

それは、日常の生活をしていて、つねに移りゆく外界のささいな変化にいちいち反応していたら、神経が疲れ果ててしまうから。

そのようなわけで心は、ある範囲までの異常は、異常だと感じずに、正常の範囲内のものとして処理するようになっている。

このような心のメカニズムが、身に迫る危険を危険としてとらえることをさまたげて、それを回避するタイミングを奪ってしまうことがあるだという。

人々が危機が迫っても逃げ後れてしまうのは、このような心のメカニズムが、悪い方向で働いた結果だという。

これは私にとっては新しい発見であった。

いかに自分が固定概念で物事を考えていたかということである。

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