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2012年2月19日 (日)

ThinkPadはこうして生まれた/内藤在正

4344998065  大和研究所は、ThinkPadの唯一の開発拠点です。その点はIBMでもレノボでも変わりません。その中で、私もそうですが、エンジニアがこの買収を前向きにとらえられたもう一つの理由がありました。
 それは少し時間がかかって確信できたことですが、レノボになればIBMの時代以上にエンジニアとしてのパワーが発揮できると考えたからです。これまでIBMがアドレスしてこなかった分野にも展開ができる、新たなチャレンジができると考えたのです。
 IBMはメインフレームを中心として展開する巨大なITカンパニーであり、大和研究所は、その一事業部にすぎません。それに比べてレノボはPC専業メーカーですから、同じくグローバル企業ではあっても、PC部門の置かれる位置づけは自ずと違ってきます。
 IBMのトータル・ビジネスの中で、PC事業がいくら頑張っても、逆に業績が悪くても、IBM全体に対する影響度は高くはありません。ThinkPadがいくら売れても、おそらくIBMの株価は大きくは変わりません。レノボであれば、そこが全く違うはずです。ThinkPadの業績は、きっと株価に反映すると思えました。主力事業になるからです。
 実際に、PCの開発に投入される研究開発費はレノボになって大幅に増加しました。
 IBMに比べ、レノボのほうが、PC事業部門の主張を通しやすいのも事実です。自分のビジネスが会社のコア・ビジネスであるということ、主流にいるということは、働くうえで大きな喜びになると知りました。より大きな意欲が湧くものなのです。
 その点を如実に嗅ぎ取ったから、エンジニアたちも、自分たちが会社を成長させるためのキーを握っていると考え、オーナーシップが高まり、さらに皆がモチベートされたことは確かです。

一つの事業部門が他社に買収されたとき、買収された側の社員はどんな気持ちだったのだろう。

そんな素朴な疑問と好奇心から本書を読んでみた。

ThinkPadは私が永年愛用しているPCである。

その堅固さやトラックポイント、キーボードのクリック感が自分にはピッタリとあっており、ずっと愛用していた。

それだけにIBMがPC部門を中国企業レノボに売却する、というニュースが流れたとき、正直ショックだった。

いち消費者でさえこんなにショックを受けたのだから、そこで働く社員はさぞかしショックだったのだろうと想像した。

ところが、本書を読んで意外に感じたのは、中国企業レノボに買収された大和研究所の社員のモチベーションは下がらなかった、むしろ上がったということ。

理由は、それまで自分たちの事業部門は傍流であり、その働きが社内であまり評価されなかったのが、買収されると主流になり、正当に評価され、自分たちの主張も通りやすくなったから、というもの。

これは、人間のやる気はどこからくるのか、という疑問に対する一つの解答を与えてくれる。

こう言っては何だが、IBMの社員と、レノボの社員とでは、やはり前者の方がステータスを感じられる。

しかし、人間のやる気の源泉は会社のブランドや見栄えだけではない。

むしろ自分のやりたいことができること。

そして、人から正当に評価され認められること。

これらが人のやる気を喚起する。

ThinkPadはずっと日本の大和研究所が研究開発しており、それはレノボに買収されてもまったく変わっていないという。

そして、ThinkPadは独自のブランドを築き上げている。

それを読んで少し安心。

今度買い換えるときにはまたThinkPadを買おうと思ってしまった。

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