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2012年3月10日 (土)

人生を選び直した男たち/竜門冬二

Bt000012516500100101_tl   信長様が怒っているのは、「前田利家は、おれの立場を理解していない」ということらしい。そして、それも、「自分は、十阿弥の告げ口などによって、織田家の人事を左右していない。それを鵜呑みにして十阿弥を殺してしまった利家はバカだ」ということのようだ。
  利家は、こういう問題の煮詰めかたによって、初めて「トップの立場」というのを考え始めたのである。いままでは自分の立場すなわち「使われる者の立場」で、問題を整理してきた。「使う者の立場」など全く斟酌しなかった。が、どうもここがまずいようだ。そう思うと、柴田勝家が懇々と言ったことが、いくつも利家の頭の中に甦ってきた。特に、「おれは十阿弥の告げ口など聞いていないにもかかわらず、利家が十阿弥を殺したことによって、それが事実だということになってしまった」という信長の無念の言葉がクルクルと利家の頭の中でまわった。
  利家は、(おれが、信長様の立場に立ったらどうだろうか?)と考えてみた。これはいままでになかったことである。自分の立場を忘れて、相手の立場に立ってものを考えるなどということは、従来の前田利家の思考方法にはなかった。それをやってみると、皮が一枚一枚剥がれて、実がはっきり見えてきた。厚い雲に裂け間ができて、その上の青い空がみえたような気分だ。(中略)
  前田利家は、初めて事の重大性に気がついた。それは、「トップには、トップの立場があり、その立場を構築している論理がある」ということであった。

人は成長の段階で「一皮むける」経験をすることがある。

前田利家にとって、このときが「一皮むける」経験だった。

仕事上で壁に突き当たって、にっちもさっちもいかなくなった時、ふと視点を変えると、視野がパッと開けるような経験をすることがある。

利家の場合は、悶々とした中で、自問自答を繰り返していくうち、このことを体験した。

ある瞬間、「使われる者の立場」から「使う者の立場」に視点が変わったのである。

これは大きな経験である。

これを称して「一皮むける」という。

大事なことは壁に突き当たった時、逃げないということ。

そして、そこに立ち続けることによって考え抜くということ。

人が成長する過程でどうしても避けて通れないステップである。

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