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2012年3月25日 (日)

凡宰伝/佐野眞一

Bt000013085200100101_tl  小渕と別れて数日後の深夜、自宅の電話が突然鳴った。正月早々誰からかと思い受話器をあげるやいなや、小渕の声が耳に入ってきた。
「もし、もーし。小渕恵三でございます。いやあ、番組をみて感激しました。これからは三カ月間つづくそうですが、全部みます。みられないときはビデオにとって、あとからみます。これからも体に気をつけて頑張ってください」(中略)
  私は小渕からの電話を切ったあと、これは端倪すべからざる人心掌握術だな、と思った。小渕はこうした卓抜な手口を駆使することで、人の心をトリモチのようにからめとってきた。カイコが糸を吐いてすべてのものを繭玉にしてしまうように相手の気持ちをぐるぐる巻きにして入眠させてきた。最初のブッチホンの驚きは「表層的」だったが、二度目のブッチホンの驚きは「深層的」だった。小渕はカサにかかってきたのか。この男を見くびると大変なことになる。私はあらためてそう思った。

田中真紀子代議士から「凡人」と称され、アメリカからは「冷めたピザ」と揶揄された小渕恵三。

ところが、その実績は目を見張るものがある。

評論家の岩見隆夫は小渕内閣発足後約1年を経過した時点で、「小渕の五大決断」として次の事例をあげている。

①98年11月、中国の江沢民国家主席が訪日した時、中国側の謝罪要求などを頑として拒んだ。

②やはり11月、自民党内の強い抵抗にもかかわらず、自由党との連立政権樹立に電撃的に踏み切った。

③今年に入って、朝鮮民主主義人民共和国の工作船侵入事件で海上自衛隊に初の海上警備行動を命じる決意をした。

④大蔵省などの執拗な要求を抑えて「大蔵省」の看板を廃し「財務省」を採用した。

⑤急転、来夏のサミット開催地を沖縄・名護に決めた。

そのほか、新ガイドライン法、通信傍受法、国旗・国家法、国民総背番号制など国家と国民の命運を左右する重要な法案をまるで鼻唄を唄うような気楽さで次々と成立させ、戦後一貫してタブー視されてきた憲法改正にまで手をかけようとしてきた。

一つでも内閣がつぶれるほどの重要法案を、これほど易々と通過させてしまった総理大臣も前例がない。

これが「凡人」のなせる業だろうか。

政治は高邁な理念だけでは動かない。

数の力がどうしても必要。

敵を作らず味方や賛同者を増やす。

それに一役買ったのがブッチホンに代表される人心掌握術だったのではないだろうか。

最近の日本のリーダーに最も欠けた要素だ。

だから何も決まらない。

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コメント

当時、佐藤栄作並みの長期政権になるのでは?と漠然と思っていました。
佐野眞一氏の取材の深さと、ブッチホンには関心があるので、読んでみます。

Lisaさん、コメントありがとう。
私もそう思います。
それにしても、最近のように首相がコロコロ変わることは
やめてほしいですね。

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