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2012年3月 6日 (火)

勝つ司令部 負ける司令部/生出寿

4404037678   対米戦について態度がアイマイになった山本が、こんどは対米戦にきわめて積極的となったかのように、昭和十六年一月七日付で、及川古志郎海相(大将、兵学校第三十一期)に、「真珠湾攻撃」を提案する手紙を書いた。
 骨子はつぎのようなものである。「日米戦争において我の第一に遂行せざるべからざる要項は、開戦劈頭に敵主力艦隊を猛撃、撃破して、米国海軍および米国民をして救うべからざる程度にその士気を沮喪せしむること是なり」
 航空部隊による真珠湾攻撃をやり、米戦艦部隊を徹底的に撃破すれば、米国海軍と米国民は戦意を喪失して、日本との戦いをやめるだろうというのである。

ロシア艦隊に完勝した東郷とアメリカ艦隊に完敗した山本。

明治と昭和の連合艦隊司令部はどこが、どうちがうのかという観点で本書は書かれている。

山本五十六といえば、真珠湾奇襲攻撃がどうしても思い出される。

ここで、山本はその案を手紙にしたためている。

最初の一撃で敵主力艦隊を猛撃、撃破すれば、米国海軍および米国民の士気をくじくことができる、と。

こんなこと本気で考えていたのか?

私にはどうしてもこれが理解できない。

少なくとも山本は米国留学の経験がある。

アメリカ人の気質を知っているはずだ。

アメリカに対して先制攻撃をして、たとえ壊滅的な損害を与えたとしても、それによって士気をくじくこができると本気で思っていたのか?

アメリカの西部劇などを見ても、アメリカ人の気質はよく分かる。

彼らは、強い相手であっても果敢に挑戦するヒーローを求める。

その気質がもっともよく現れていたのは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマイケル・J・フォックスが扮した主人公が、相手から「腰抜け」と言われとたん、冷静さを保つことができなくなり、むきになって立ち向かっていった場面。

「これがアメリカ人なんだろうな」とつい思ってしまった。

事実、真珠湾攻撃は、日本の対米最後通告が攻撃開始よりも約一時間おくれたことも相まって全米国民を憤激させ、いっきょに対日戦に立ち上がらせてしまった。

ハワイの被害は見かけよりたいしたものではなかったとともに、全米国民を憤激させて、「リメンバー・パールハーバー」という合言葉で結束させるには十分であった。

その意味で、私自身としては山本五十六はあまり評価できない人物である。

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コメント

昭和38年に、米国で「名将 山本五十六」という本が出版されています。

山本長官の方針は、あくまで「事前に宣戦布告をして、米国民の戦意を高揚させない事」が前提でした。
駐米事務官が、宣戦布告を遅らせてしまった事で、長官の計画は頓挫しました。

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