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2012年3月12日 (月)

すべては音楽から生まれる/茂木健一郎

Znp1a   人間は、生きていく上で様々な事態に出遭う。時には困難と向き合わなければならない。銀のスプーンをくわえて生まれてきたとしても、どんなに風光明媚な場所で暮らしていたとしても、難事の連続であるという人生の本質や、この世で生きることの辛苦から逃れることはできないのだ。
  だが、絶対的な座標軸ーーたとえば「喜びや美の基準」といつたものさしーーが自分の中にあれば、日々の難事や苦しみは、ずいぶんとやわらぐものである。
  これは、あくまでも自分のものさしだ、という点に強みがある。世評や人気といったような、他人を介在するものさしではない。浮世の表面的なこととは関係がない。自己の体験から生まれた独自の軸なので、揺らぐことなく自分を内側から支えてくれる。
  絶対的な座標軸の存在が、その人にとって、生きるということの決め手になるのだと思う。人生の苦しみを緩和し、さらには、世界の美しさや楽しさに目を向けさせてくれるような、生きる秘訣となるのではないだろうか。
  この世はままならぬことばかりである。自分の理想とはほど遠い現状に憤慨や焦燥、諦念を覚えることも少なくはない。だが、座標軸があれば、周りがどう思おうと関係ない、という潔い強さを持てる。「周りがどうあろうと、自分の中から光を発し続けていればいいのだ」という域に達することができるのだ。その光源たり得るものとして、音楽はある。
「美しい」「嬉しい」「悲しい」「楽しい」……。一瞬一瞬に生身の体で感動することによって、人は、自己の価値基準を生み出し、現実を現実として自分のものにできるのである。それが「生きる」ということである。だからこそ、本当の感動を知っている人は、強い。生きていく上で、迷わない。揺るがない。折れない。くじけない。
  音楽は、そんな座標軸になり得る。音楽の最上のものを知っているということは、他のなにものにも代えがたい強い基盤を自分に与えてくれるのだ。

本書は茂木氏の音楽に対するこだわりや思い入れの本といってよい。

だから、音楽を脳科学的なアプローチから解明することを期待して読むとがっかりする。

音楽が茂木氏にとっていかに重要なものであるか、それはこの文章を読むとよく分かる。

おそらく本書で茂木氏が言いたかったことはこのことだったのではないだろうか。

「座標軸」という言葉をここでは使っている。

誰が何と言おうが、自分だけがもっている喜びや美の基準。

これが生きていく上で重要だと言っている。

そして、それが茂木氏にとっては音楽だったということ。

しかし、座標軸となりうるものは、音楽だけではない。

人によっては一枚の絵画であるかもしれないし、一本の映画であるかもしれない。

あるいは、何らかの原体験かもしれない。

ひとそれぞれである。

大事なことは、自分なりの価値基準をもっているかどうかであり、その基となる座標軸をもっているものは強いということである。

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