これが答えだ!/カート・コフマン&ゲイブリエル・ゴンザレス=モリーナ
社員と才能に関して言うと、多くの企業は二十世紀の変わり目頃の手法を用いている。彼らはいまだに、高い成果をあげる人間は生まれるものではなく、作られるものだと固く信じている。社員は、たんに情報(知識)を与えられ、充分な期間、訓練を受ければ(スキルを習得すれば)、質の高い仕事をするはずだと考えられている。
この考えはまちがっている。神経科学によれば、人はもともと脳に張り巡らされた回路に従って、学習し、行動する。よって、あることを学び、応用することは、ある人にとっては容易で、別の人にとってはそうでない。企業が社員に対する情報のハイウェイを広げても、それぞれの社員が情報を取捨選択する方法は変えることができない。どの情報を使い、どれを無視するかは、脳が決定するのだ。
どんな企業もこの自然の摂理を変えることはできない。たとえ何百万ドルという金を無意味に注ぎ込んだとしても。(中略)
では才能とはいったい何だろう。多くの人は、才能はひと握りの人間だけに与えられる特別な能力と考えている。四回転ジャンプを成功させ、オリンピックで金メダルをとるような幸運な人間だ。または、七歳の指で心揺さぶるバイオリンの音楽を奏でる神童だ。あるいは、白黒の映像の中に、ある田舎の雰囲気を表現する映画製作者だと。
彼らは魔法の手を持っていて、トースターから年代もののサンダーバードまで、何でも修理するこあかとができる。あらゆるものの在り処を知っていて、必要になるまえに手に入れられる。わずらわしい手順が必要な場所を見抜き、それを回避する方法を考えつく人たちだと。
しかし才能はこれを超える。一般的に考えられているよりはるかに広範なものだ。才能はわれわれ全員に備わっている。何かの点で、われわれの一人ひとりに力を発揮させる生まれつきの素質だ。才能~繰り返し現れる思考感情行動パタ-ン~が適切な役割を与えられたときにこそ優れた成果が生み出される。重要なのは、それぞれの才能を最大限に活用できる役割を見つけることだ。
ここでは「才能」について三つのことを言っている。
第一に、成果は才能によって生み出される。
第二に、才能は持って生まれたものなので変えることはできない。
第三に、才能はわれわれ全員に備わっている。
と、いうこと。
大事なことは自分に与えられた才能を発見し、それを最大限に活用できる役割を見つけること。
そして、マネージャーの仕事は、部下の才能を発見し、それを最大限に活用できる役割を与えることだという。
ギャラップ社のコンサルタントである著者が、認知神経科学を用い、膨大な調査の統計分析を行うことによって導き出した答えがこれだ。
圧倒的なデータに基づいた分析であるだけに説得力がある。
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