デフレの正体/藻谷浩介
たとえて言えば、景気の波は普通の海の波、それに対して生産年齢人口の波は潮の満ち引きです。浜辺で砂の城を作って遊んでみると実感できますが、同じ高さの波でも満ち潮の時には威力が増しますし、逆に引き潮の時にはどこか元気が欠けていますね。生産年齢人口の潮も、満ち寄せているときには好景気は底上げされますし、不景気といっても余りダメージが生じない。逆に生産年齢人口の潮が引き始めれば、好景気でもさほどの盛り上がりは生じず、不景気のダメージは深刻になります。あるいは、生産年齢人口の減少というのはゆっくり下るエスカレータのようなものです。元気に歩いて登っていっても、なかなか上に着けない。逆にちょっとでも休めばみるみる下に落ちて行ってしまう。
本書の言っていることを一言で言えば、「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」ということ。
だから、単なる生産性の向上や景気が良くなればすべてが解決すると言った単純な話ではない、
もっと根本的、かつ、構造的な問題なのだという。
では、解決策は何なのか?
①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めること。
②生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やすこと。
③(生産年齢人口十高齢者による)個人消費の総額を維持し増やすこと。
そして、そのためにやるべきことは、
第一は高齢富裕層から若い世代への所得移転の促進。
第二が女性就労の促進と女性経営者の増加。
第三に訪日外国人観光客・短期定住客の増加だという。
様々な統計数値を使ってこのこと説明しており、「生産年齢人口」という切り口から論旨を展開しているところに新鮮さを感じた。
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