田中角栄に今の日本を任せたい/大下英治
文部大臣、労働大臣、法務大臣、総務大臣、内閣府特命担当大臣(地方分権改革担当)などを歴任した衆議院議員・鳩山邦夫によると、田中角栄は、役人の使い方も抜群であったと言う。
鳩山の政界スタートは、田中角栄総理秘書からだった。
秘書として総理官邸に詰めていると、『日本列島改造論』を執筆した一人の堺屋太一からの電話を受けることもあった。当時は、本名の池口小太郎として通産官僚だった。
堺屋太一をはじめ、優秀な役人たちを使いこなす力にずば抜けていたのが田中角栄だった。
総理になる前も、総理になってからも、田中角栄が「これ!」と見込んだ役人の数は相当なものだった。鳩山が知っているだけでも、100人、200人……、もっといたかもしれない。(中略)
田中は、強いリーダーシップで役人を使いこなせる政治家だった。一方、役人たちも田中を慕っていた。政治家と役人は、敵味方の関係にある。それでも、9割の役人は田中を慕っていた。
日本は今、危機的な状況にある。
そして、危機が訪れる度に必ず出てくるのが田中角栄待望論である。
「もし角さんがいたら、どのような大胆な政策を打ち出すだろうか」という田中角栄待望論が強まる。
今回、国難と言える東日本大震災に見舞われ、いっそう田中角栄待望論が聞こえてくる。
なぜか。
田中角栄なら、それまでの政策の延長線でなく、大胆な政策を打ち出し、日本をガラリと変えてくれるのではないか。
そう思わせるからであろう。
そして、田中角栄のやり方で今の政権与党の政治家と決定的に違うのが、役人の使い方である。
角栄は、役人と対立するのではなく、役人をうまく使っている。
おそらくこれが本当の「政治主導」なのだろう。
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