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2012年5月23日 (水)

聯合艦隊司令長官 山本五十六/半藤一利

51nbiuzkul__sl160_ そして、このあとに到着するいちばん肝腎な第十四部を解読し、アメリカ政府へ通告するまでの経過が無残この上ないものとなります。タイプ打ちが間に合わず、ついには、開戦通知がアメリカ国務長官のもとにもたらされたのは、日本の機動部隊が真珠湾を爆撃してから一時間後という失態となってしまったのです。それは誤判断と気のゆるみ、そして怠慢によるとされているのですが、じつは日本外交の本質にかかわる問題でもありました。
 なんとなれば、日米交渉は野村吉三郎と来柄三郎の仕事として、大使館員たちのほとんどは無関心を装いつづけていたというのです。これぞ官僚的といえそうなセクショナリズムでした。憎っくき野村の手助けなど御免蒙るというケチな料簡があったにちがいない。親身ならざるがゆえに、東京から送信されてきた長文の対米覚書が最後通牒となる可能性など、かれらは思ってもみなかった。となれば、最後の第十四部がなにを意味しているかを理解することなく、どうせ今夜は来そうもないから、明日の仕事にしようと勝手に判断して土曜の夜を楽しむことに、あいなったのです。
 その結果は、東郷外相がその著書に悲憤をもって記しました。「通告時の怠慢は国家の非常なる損失、万死に値する」と。まさにそのような失態でした。

日本の開戦通知がアメリカ国務長官のもとにもたらされたのは、日本の機動部隊が真珠湾を爆撃してから一時間後だった。

これがもとでルーズベルト大統領はこの奇襲を「だまし討ち」だと議会演説やラジオの談話でまくし立てるようになる。

アメリカ国民はいまだかつてないほどに団結を示し、報復を誓う声が方々から起こってくる。

この大失態の原因は大使館員の怠慢に他ならない。

しかしその奥にはセクショナリズムと感情的な反発があった

組織は感情で動くとよく言うが、まさにそれが最悪のタイミングで起こってしまった。

もちろん、開戦通知が予定通りアメリカ政府に届いたとしても、戦況が変わったとは思えないが、この失態が火に油を注ぐような結果になってしまったことは確かだ。

今も昔も、官僚のやっていることは、国のことを考えているようなポーズはするものの、実際は自分たちのことしか考えていないようにしか思えてならない。


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