組織をだめにするリーダー、繁栄させるリーダー/フランチェスコ・アルベローニ
企業や政党、公私の団体、はては家族に至るまで、うまく機能するためには共通した言葉が必要だ。言葉には価値観や目的だけでなく、問題を提起したり解決したりするやり方までが現れる。言葉は国家や民族集団を特徴づけ、ときには企業の性格も浮き彫りにする。大規模な多国籍企業では、日本とイタリアとブラジルといったさまざまな国で働く人が、同じ言葉を使い、同じ概念をもっている。マニュアルや本や講座でそれらを習得するからである。(中略)
その組織がうまく機能していれば、どのレベルの人も同じ言葉を使っていることに気がつくはずだ。ところがまとまりの悪い組織では、私的な場と公的な場で使う言葉がまったく違う。万事がうまく運ばなくなると、ある場でたまたま使われた不調和な言葉がそこらじゅうに広まって、きちんとした言葉を脇に追いやってしまう。まるで無数の方言があるようで、まさにバベルの塔という感じである。
うまく機能している組織かどうかは、その構成員が使っている言葉を聞けばわかる。
つまり、ある組織がうまく機能しているかどうかは、みんなが共通言語を使っているかどうかで分かるとアルベローニ氏はいう。
確かに、効率的で力強い企業では、おのおのが、たとえ人のいないところでもその組織の言葉で話をするものだ。
おそらくそれは、その企業が、その人自身とその人のアイデンティティーや尊厳の一部になっているからであろう。
自分の属する組織に誇りを持っていれば、言葉もその組織の言葉になるものだ。
今日、会社で働いているのは正社員だけではない。
正社員、アルバイト、パート、派遣、請負、役員、など、さまざまな種類の人が働いている。
職種も現場の作業員、事務員、営業マン、等々、様々。
その人たちがどのような言葉を使っているか、これに注視する。
言葉だけでなく、声の調子、しぐさ、着ているものにも目を向けるとよいかもしれない。
仲間同士のおしゃべりに耳を傾け、公式の場の大勢の前でどう話すかにも注意する。
もし、そこで交わされる言葉に、何の共通性も見いだせず、バラバラということになると、その組織はうまくいっていないのでは、という見方をする必要があるかもしれない。
耳障りで敵意さえ感じられるくだけた言葉がどこの部署でも使われるようになったとすれば、それは、致命傷にもなりかねない亀裂や争いが出てきているということだ。
そういう言葉を聞いていると、いよいよ変わり目にさしかかっていて、組織の薄皮がはがれはじめたと判断しても良い。
つまり、組織の末期症状が現れ始めているということ。
これは組織を見る時の大事な視点だと言えよう。
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