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2012年6月 5日 (火)

運命の人(三)/山崎豊子

Bt000014260900300301_tl 「ま、当分はゆっくり休養するとして、先行き、何らかの目算はついているのかね」
 さらりと話題を変えた。
 「判決のことしか考えていませんでしたので、先のことはまだ・・・・・・」
 「そう・・・・・・、実は副社長が君の将来を心配されていてね、勝訴を勝ち取ったのを節目に、社を離れて君の能力に見合った道を歩んではどうかと・・・・・・」
 猫の首に鈴をつける大役を任された編集局長は、やや腰の引けたもの云いで、弓成を上目遣いに見た。退職を迫る見え透いた態度に弓成は屈辱を覚え、奥歯を噛みしめた。自分がいなければ政治部は廻っていかないと、馬車馬の如く夜討ち朝駆けで働き続けていた職場は、僅か二年もしいなうちに、冷たくなっていた。

第一審で勝訴し職場復帰した矢先、弓成は上司に呼ばれ退職勧奨を受ける。

新聞社といえども、しょせんは民間企業の一つ。

利益が出なければ事業の継続はできない。

記者が社会正義を貫こうとしても、経営陣はやはり事業の永続と発展を考える。

特にこの事件のように、外務省の機密漏洩事件がいつのまにか男女のスキャンダル問題にすり替えられたのでは、新聞社のイメージは落ちるばかり。

販売部数が落ちれば、経営にも影響を及ぼす。

結局はトカゲのシッポきりと相成る。

だが、これと同じようなことは今も形を変え繰り返し行われているのではないだろうか。

たとえば、テレビメディアはスポンサーの気に入らない報道は決してしない。

観ていて、何か裏があるのでは、と勘繰りたくなる報道が多く見られる。

そして当たり障りのないバラエティー番組でお茶を濁す。

本質は同じではないだろうか。

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